ビジネス課題を持っているすべての人へ、SAS製品を

2003/6/28

 「進化の激しいビジネス環境の中で、基幹システムによるリアルタイムな経営管理はもはや必須の手段。だがプロセスデータだけを蓄積しても、それを活用する術がなければ企業は生き残れない――」6月17日〜19日まで、オーストリア・ウィーンで開催された「seugi_21」の中で、SAS Institute(以下SAS)が出したメッセージはこの一言に尽きる。

SAS Instituteのジム・グッドナイトCEO

 同社の誕生は1976年。統計解析ソフトの分野で飛躍的な成長を遂げ、その製品は学術機関のみならず、ビジネスデータの分析・活用を指向するトップ企業に受け入れられてきた。現在導入実績は約4万サイト、うちFortune500に名を連ねるトップ企業が95%を占める。この成長ぶりに、同社ジム・グッドナイト(Jim Goodnight)CEOは一言、「ラッキーだった」と笑う。日本法人は1985年に設立。以来、業務データを分析し経営判断の重要な材料として活用するビジネスインテリジェンス(BI)・ソリューションを一貫して掲げてきた。またBIの効果を最大限に引き出すため、「SEMMA(Sample、Explore、Modify、Model、Assess)」というデータマイニングに特化したプロセスを打ち出し、企業のデータ活用推進に一役買ってきた経緯を持つ。

 そんなSASのメッセージが、よりビジネス指向を帯びてきたのは、ここ2〜3年のことだ。もともと統計解析分野から出発した同社の製品は、「一部の研究者やマーケターのもの」という色合いが強く、一般ビジネスマンが使いこなすには“専門知識”という壁があった。しかし最近はユーザーインターフェイスをグラフィカルなものとし、一般利用者が直感的に分析結果を判断できるように工夫を凝らすとともに、CRMやSCM、さらには特定の業界向けソリューションテンプレートの開発など、ビジネスユーザーの課題に直接訴えかける製品を次々と発表している。

 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)のジム・デイビス(Jim Davis)氏は、「SASのソリューションはCEO、CIOをターゲットにしている」と言う。「単なるプロセスデータを経営戦略指標として活用するBIは、経営トップこそ率先して使いこなすべきもの。われわれは彼らに積極的にアプローチしていく」。

 とは言え、日本企業は欧米に比べ、ITに対する認識や理解はまだ低い。IT部門担当者が経営層として会社を運営していくのは、一部の先進的な企業を除くとほとんどないだろう。これに対し、デイビス氏は「CIOやCEOという言葉が大げさなら、『現状の業務に何らかの課題を見いだしている人』と言い換えてもいい。日々の業務の中で何らかの課題があるにもかかわらず、その原因が究明できない、適切な手段が取れないなど、方向性が立てられない状態を支援するのがBI技術だ。SASは統計解析手法に裏打ちされた高度な分析手法を、ビジネスユーザー向けに使いやすくテンプレート化することで、BI分野のトップリーダーになる」と述べる。続けて、「企業全体がデータによる経営戦略を推進する“インテリジェンス・エンタープライズ”に変わるには、5段階程度のステップが必要になる。最初は1人の専門家がデスクトップで分析ツールを使うところから始まるが、最終的にはその情報を毎日みんなで共有して、具体的なアクションに持っていく企業体質を作らなくてはならない。だからこそわれわれはこうして、先進企業の事例を全世界のユーザーにアピールしていかなくてはならないのだ」とも。

■日本法人はビジネス・コンサルタントを積極採用

SAS International バイスプレジデントのフィリップ・ベニアック氏

 そこで今後、対日本のビジネス戦略としてはどのような構想を描いているのか。アジア・パシフィックを担当するSAS Internationalバイスプレジデントのフィリップ・ベニアック(Phillip Beniac)氏は「日本国内の売り上げでワールドワイドのシェアを10%にしたい」と意欲を見せる。勝算はある。現在、日本法人は前年同期比26%の売り上げ増を達成。このままいけば、目標には手が届きそうだ。そのための具体的な方策は4つ。1つ目は、業種・課題別などさまざまな用途に向けた製品の品ぞろえを実現していくこと。2つ目は、そうした製品を効率的に導入できるよう、SAS本社やSAS Internationalの専門スタッフを日本オフィスに派遣し、専門技術を徹底的に叩き込むことだ。これにより、技術・ビジネス課題の面からより細かいコンサルティングを提供できるという。

 3つ目には、日本法人のスタッフ増強に努めること。例えば先日発表したSCMソリューションについて、現在導入コンサルティングスタッフは20人抱えている。この人数を「できれば4倍の80名にしたい」(ベニアック氏)という。「そのソリューションがカバーするビジネス課題に精通しているスタッフを増やす。なぜならビジネス課題というものは、製品を導入すれば即解決する単純なものではないからだ。ユーザーと一緒になって考え、解決への道筋を立てられるスタッフが必要だ。われわれはそうした能力を持つスタッフを、徹底的にサポートしていく」(同)。

 そして最後の4つ目は、誰もが手軽に利用できるWebサイトからのアプローチも欠かせない。現在、「BetterManagement.com」内にSASを使った海外の先進事例が数多く掲載されている。この内容について順次日本語化を進めていき、「最終的には、『このサイトに行けば解決の糸口が見つかる』ような有益な情報ソースに仕上げたい」(同)と語る。

SAS Internationalのシニアバイスプレジデント アラン・ラッセル氏

 同じくSAS Internationalのシニアバイスプレジデントで戦略を担当するアラン・ラッセル(Allan Russell)氏は「われわれが提供しているのは、レポーティングでもデータの加工技術でもない、統計学に裏打ちされた確実な分析ソリューションだ。SASが製品を売り切りの形ではなく、レンタル制を採用している理由もそこにある。ユーザー企業と末永く関わりを持ち、何かあればすぐ支援できるようにわれわれはいつも待機している」と、ソリューション・プロバイダとしての自信を見せる。

 BIツールのソフトウェアベンダから、ユーザー企業のビジネス課題に踏み込むソリューション・プロバイダへ。SASの戦略は、不況に苦しむ日本企業にとって救いの一手となるか。

(編集局 岩崎史絵)

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SAS Institute

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