ソニーを支える開発手法は「一流のテイストを簡単に再現」
2003/7/18
基幹システムから商品の電子商取引のWebサイト構築まで、グローバル企業ソニーのさまざまなシステム開発で利用されているJavaベースの開発手法がある。ソニーのシステム開発子会社である、ソニーグローバルソリューションズ(SGS)のプロジェクトマネジメント事業部 ディレクター 大野豊氏が、その開発手法を説明した。
ソニーグローバルソリューションズ(SGS)のプロジェクトマネジメント事業部 ディレクター 大野豊氏 |
大野氏は日本BEAシステムズのイベント、「BEA eWorld JAPAN 2003」で講演。大野氏は現在の開発手法が直面している課題について、「顧客企業のビジネス変化が激しく、仕様が決まらなかったり、開発中に変更されることがある」と指摘。「これまでは仕様が決定していることは前提条件だったが、インターネットアプリケーションにおいては仕様が決まらないことを前提条件としてプロジェクトマネジメントする必要がある」と述べた。その際に重要になるのが、「いかにエンジニア個人の力を生かすことができるか」で、「組織と個人のマネジメントのバランスが重要」と述べた。
“仕様が決まらないことが前提”というSGSから見ると、ウォーターフォール型の開発手法は限界を迎えている。「ルールが変わればやり方を変えることをマネジメントは考えるべき」という大野氏は、「ウォーターフォール型開発手法を圧縮したプロセスを、何回か繰り返し、ある程度の方向性を決めながら徐々にゴールに近づくことが重要」と説明した。
この考えに基づき開発したのが、J2EEベースでBEA WebLogic Serverを使った開発手法。この手法では基本的なシステムアーキテクチャを共通化。「異なるソリューション開発でもアーキテクチャを統一できる」(大野氏)という。フレームワークはイーシー・ワンの「cFramework」を採用。共通モジュールも利用し、アーキテクトがプロジェクトごとにサンプルとなるアプリケーションである「Application Common Base Layer」(ACBL)を開発する。プログラマはACBLを基に個別の業務アプリケーションを開発する。つまり高いスキルを持つ少数のアーキテクトが開発したACBLをベースに、一般のプログラマが業務アプリケーションを開発する考えで、大野氏は「難しい作業はアーキテクトが行い、やさしい作業はプログラマが行う」と説明した。この手法を使うことで、個人と組織のスキルのバランスを取ることができ、プロジェクト全体を効率化できるという。
大野氏は「システムの開発手法はレシピのようなもの」と指摘。「スキルを身につけた人がレシピを見ながら料理する」として、「一流のアーキテクトのテイストをプログラマが簡単に作ることができるのがこの手法だ」と述べた。
(垣内郁栄)
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