富士通、Linuxに熱烈なラブコール

2003/7/19

富士通 エンタプライズシステム事業本部 本部長代理 山中明氏

 富士通は7月16日から3日間、都内で「富士通ソリューションフォーラム」を開催した。経営の観点から同社のテクノロジを一望のもとに紹介するプライベートショーである。

 ITシステムのオープン化の波は国内のメガメインフレーマの富士通を大きく揺さぶっている。同社は6月17日に企業の基幹システムを構築するための基盤製品群「TRIORE(トリオーレ)」を発表したばかり。TRIOREは、同社が最適と考えるテンプレートである「プラットフォーム・インテグレーション・テンプレート(Piテンプレート)」を中核としたシステム・インテグレーションのコンポーネントの固まりで、同社が顧客にシステム構築サービスを行う際の道具として活用していくもの。テンプレートを構成する「ミドルウェア」「サーバ」「ストレージ」「ネットワーク」といったモジュールは、自社製品以外にもオラクルやサン、Red Hat、BROCADE、Ciscoといったさまざまな他社の製品を組み込んでいる。

 つまり、従来同社の製品で一から構築、検証を行ってきたシステム構築サービスの開発プロセスを、標準化されたコンポーネントを基に行う「プレハブ工法」に切り替えようとする動きだ。これを実現するには、コンポーネントを構成する要素にオープンソースのソフトウェアを取り入れ、技術的な支援も積極的に行っていく必要がある。現在同社では特に、基幹業務向けのサーバOSとしてLinuxに注力していく体制を強化している。

 マネジメントセッションで講演した富士通 エンタプライズシステム事業本部 本部長代理 山中明氏は「Linuxで築くミッション・クリティカルシステム」と題し、富士通のLinuxに対する取り組みを解説した。

 現在、同社の基幹業務向けサーバラインアップは、メインフレームとして「GS21」、UNIXサーバである「PRIMEPOWER」、Windows、LinuxサーバとしてのIAサーバである「PRIMERGY」がある。このうち、ミッション・クリティカルの分野で同社がこれまで「半世紀以上におよぶ構築と運用の実績を誇ってきた」(山中氏)、メインフレーム、UNIXサーバの領域に、Linuxサーバも加えていこうとしている。このような動きは、2002年10月に発表したLinux事業戦略の一環であり、まだ新しい動きである。この半年間で同社が行ってきたLinux関連の動きでは、1月24日にメインフレームクラスのLinuxサーバを開発、提供していくことを前提に米インテルと協業を発表し、4月16日に、e-Japan電子自治体パッケージのLinux対応を発表、5月8日に米レッドハットと日本企業としては初となるグローバルな提携を行ってきた。

 このような取り組みの結果、同社のLinux対応基幹システム向け「標準プラットフォーム」は、サーバがIAベースの「PRIMERGY」、業務系ソフトウェアに、アプリケーションサーバ「Interstage」、DBサーバに「Symfoware」、運用管理ソフトに「Systemwalker」、クラスタソフトに「PRIMECLUSTER」という構成となった。LinuxOSは、Red Hat Enterprise Linux ASが中心となる。ネットワーク・ストレージは「ETERNUS」である。

 同社が基幹業務向けのサーバにLinuxを採用する動きの背景には、政府調達市場におけるLinuxの人気の高さがある。NEC、日立、NTTグループとともに同市場にイニシアティブを持つ同社が、Linux対応ソリューションの強化策を打ち出すのは当然といえるが、競合他社と比較して後発組の同社がどこまで先行組を圧倒できるか。今後の展開に期待したい。

(編集局 谷古宇浩司)

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