コンポーネントベース開発で戦略に柔軟対応、アクセンチュア

2003/7/24

アクセンチュア 金融サービス業本部 統括パートナー 関戸亮司氏

 アクセンチュアは7月23日、銀行業に特化した次世代IT構想の展開シナリオを公表した。金融サービス業本部 統括パートナー 関戸亮司氏は「銀行は二極化の競争時代に突入している。効率化を追求するだけではライバルに勝ち目はない」とし、IT投資におけるROI向上の追求が主眼となりつつあるシステム構築のうたい文句を批判、「成長シナリオを伴った戦略的なシステム構築を行うべき」と、同社が得意とする銀行間のM&Aコンサルティングを将来的な視野に含めた戦略を披露した。

 展開したシナリオの基礎データは、米国のトップに位置する銀行群の戦略モデルで、同社では、海外での成功体験を国内の大手都市銀行、上位の地方銀行に応用していく構え。

 例えば、シティグループのように全世界で展開しながら、それぞれの支店が各地域でトップレベルの業績を上げるようなビジネスモデルを構築するタイプや、地域密着でフルラインのサービスを提供するタイプ、自行・他行の商品を一括集約して扱いながら幅広いリテールサービスを提供していくタイプなど、アクセンチュアがカテゴリ分けする勝ち組みの銀行にはさまざまなタイプが存在する。「つまり、自行の強みを把握し、戦略転換に合わせて柔軟に対応できるシステム構築を行っていくことが重要」(関戸氏)だという。そして、アクセンチュアが唱える銀行の基幹システムにおけるビジョンは「勘定系と情報系という従来型のシステム区分概念を取り去る」(関戸氏)ことに集約される。

 これらのビジョンを実現するシステムの設計・実装段階で同社が導入するのが、独自のコンポーネントベース開発プロセスである。コンサルティングファームとしての実績と銀行業で積み重ねたノウハウをもとに、ビジネス領域でのモデル化(ビジョン・モデル、プロセス・モデル、商品モデル)を行い、これらのビジネスモデルを論理設計モデルに落とし込んでいく。活用するUML図は、アクティビティ図とシーケンス図、パッケージ図、クラス図の4つに限定している。その後、「プレゼンテーション」「アプリケーション」「業務統合」「バックエンド」の4層の標準実装アーキテクチャをカスタマイズしながら実装作業を進めていく。このうち、「業務統合」のアーキテクチャは、拡張性と再利用を考慮して、「プロセス・コンポーネント」「参照コンポーネント」「ラッパー」の3つのデザインパターンを用意している。分析、モデリングフェイズでは、RUP(Rational Unified Process)をベースに同社が独自に機能拡張を行った方法論を採用している。

 このような最新テクノロジの分析・設計・実装工程を貫徹できるスタッフが果たして同社に何人いるのか、との疑問はわくが、金融サービス業本部 アソシエイト・パートナーの森田勝弘氏は「(アクセンチュアは世界展開しているため)スペシャリストとして海外から専門家を派遣してもらうことが可能。また国内の先進企業とも協力をしていきたい」と話す。実装は中国の大連やインドなど技術力に優れ、コストの安い地域に設けられた同社の開発拠点で行う。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
アクセンチュア

[関連記事]
CRM市場をリードするコンサルティングファーム (@ITNews)
IT投資という名の無駄遣いをなくす処方せん (@ITNews)
日本企業はITのROI(投資対効果)に無頓着か? (@ITNews)
塩漬けレガシーシステムをどうする? ベンダが本音で提言 (@ITNews)
東京三菱銀行CIOが語る「CIOの真の仕事」 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)