ウォルマート、DWH利用戦略の裏
2003/7/26
7月25日に内田洋行が開催した「ウチダソリューションフェア」の基調講演に登壇したシステムズリサーチの代表取締役 吉田繁治氏は、「30兆円小売業:ウォルマートのデータウェアハウスの利用戦略を解く」と題し、小売業における経営戦略と情報システムとの有機的なかかわりを、ウォルマートの成功事例をもとに分析した。
吉田氏の講演は、常識的な発想が激烈な競争市場にあっていかに役に立たないかを、ウォルマートの経営戦略を軸に解き明かしたものだ。吉田氏が「売り場の単品作業こそ知識作業である」と述べる背景には、日本の小売業における現場軽視の姿勢を激しく非難する意志がある。
日本の多くの小売業が経営的に厳しい状況に陥っているのは、「商品管理、在庫管理といった情報システムが、売り上げ結果のアウトプットマネジメントを行う機能を果たしていないから」と指摘、さらに「店舗のユニットコントロールの不能を自らの経営戦略が作り出していることに気付かない」ことも問題だと話す。吉田氏によると国内での成功例はセブンイレブンに代表されるコンビニエンスストアである。ウォルマートの創業者サム・ウォルトン氏が1980年代に来日した際、セブンイレブンの店舗機能を見て驚嘆したエピソードなども紹介した。
基調講演は盛況だった |
約4400店舗、20万人の現場スタッフを擁するウォルマートは、「単品作業における、“判断の生産性向上”を目的とする情報システムの構築がうまくいった最大の例」と吉田氏は言う。同社では、12万品目117週の歴史データや商品計画データをもとに本部バイヤーが在庫分析、売り上げ分析を行い、毎日午前6時に売り場の50人のカテゴリマネージャの無線携帯端末にネットを介して、毎朝の推奨補充品目と推奨補充数のリストを一斉送信する。
しかし、このデータは確定データではなく、あくまで現場のカテゴリマネージャが品目の補充を行う際の参考データに過ぎない。最終的な判断は現場に任され、正午までに各々の補充データを本部に送信することで、1日の取引量が決まる。「店舗、バイヤー、ベンダが携帯端末を通じて協働する体制を構築したことがウォルマートの強さの秘密」だと吉田氏は言う。もちろん、本部バイヤーが現場に提案するさまざまなデータを作り出す過程にも同社独自の経営哲学が深い影響を与えている。
「最終目標はたくさん売ること。たくさん売るには、最低価格を実現すること。そのためには、在庫をかかえない効率的な棚作りをすること。棚を作るには、商品特性と店舗特性を厳密にデータ化しなければなばらない。そのために管理システムを構築すること。そして、このような管理システムが最適に稼働する経営方針を立てること」。吉田氏はウォルマートの経営戦略を「小さく考える」というウォルトン氏の“基本哲学”に集約させる。世界最大の小売業者ウォルマートの成功哲学は、店舗の棚一角から利益を出す精神で貫かれている。
(編集局 谷古宇浩司)
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