障害発生が3分の1に、三菱電機が証明したCMMI取得の効果

2003/8/21

 三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)は、情報システムの開発能力を客観的に評価する認定モデル「CMMI」の4つの評価分野で、レベル3の認定を6月27日に受けた、と発表した。MDISによると、CMMIの4つの評価分野でレベル3を取得したのは国内企業で初めて。世界でも2社程度だという。

 CMMIはソフトを含む情報システムの開発能力を評価するモデル。顧客企業が情報システム調達先の評価や選定を行う際の指標として活用されている。米国生まれのモデルだが、国内の調達でもCMMIの認定を受けることが入札の参加条件になるケースが増えてきた。MDISが取得したのはCMMIの中で、ソフトウェア開発、システムエンジニアリング、統合成果物開発、ソフトウェア調達の4分野からなる「CMMI-SE/SW/IPPD/SS Version1.1」。国内の主なシステム・インテグレータもCMMIのソフトウェア開発やシステムエンジニアリングで認定を受けているが、4分野で認定を受けたのはMDISが初めてだという。

 認定のレベルは5段階で、MDISが取得したレベル3は「開発目標や管理手順を組織的に定義し、組織レベルで積極的な改善活動が確立しているレベル」となる。MDISが展開する事業分野の中でも、金融と流通・サービス分野のシステム開発について認定された。MDISは2002年5月から認定を受けるための作業を開始。すでに取得していた品質管理の国際規格ISO9001などをベースにすることで、14カ月でCMMIを取得できた。CMMIのベースとなったソフトウェアCMMの場合、レベル2からレベル3への移行には平均して23カ月かかるというが、MDISはISO9001や社内の品質管理システムを基盤とすることで短期間で取得できた。

三菱電機インフォメーションシステムズの技術本部長 下間芳樹氏。右はCMMIの認定書

 MDISがCMMIの認定を受けるきっかけとなったのは、受注したプロジェクトで当初の計画からコストが超過するケースが増えていたから。MDISの技術本部長 下間芳樹氏によると、1998年当時、超過コストの総額は年間で「2ケタの億ぐらいになっていた」。その理由は契約や見積もり、SI作業の品質にかかわる問題。具体的には、受注・契約の確認が不十分だったことや、要件定義の完成度が低いこと、プロジェクト管理能力が弱く、トラブルを予兆できなかったことだ。これら契約・見積もり、品質の問題が、コスト超過要因の約70%を占めていた。

 MDISはCMMIの取得のために社内はもちろん、三菱電機の技術本部や研究所、外注先などとの業務プロセスを改善。品質保証や生産プロセス、スタッフ業務などを強化した。CMMIを取得し、プロセス改善したことの結果は、品質向上や超過コストの減少に現れた。これまでシステム開発で誤りを見つける場合、システムの試験時などに発見するケースが多く、手戻り工数が多く発生していた。しかし、プロセス改善後はシステム設計など上流工程で誤りを見つけることが多くなり、手戻り工数を削減できたという。

 カットオーバー後の障害発生も従来の3分の1に減少。見積もりの精度も向上し、計画と実績のコスト変動が以前と比較して少なくなった。そのため営業目標達成が容易になった。プロジェクト失敗による超過コストは1998年当時と比較すると10分の1以下になったという。

 下間氏はCMMIの認定について、「認定取得自体が目的ではない。プロセス改善による品質と生産性の向上を狙うのが目的。経営側から見ると収益向上と顧客満足度のアップを目的としている」と説明。「今後、プロセス改善の定着を図り、レベル4から5の認定を目指す」と述べた。

(垣内郁栄)

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三菱電機インフォメーションシステムズ

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