“モバイルSFA”でビール業界が変わった

2003/9/9

カシオ計算機のシステムソリューション営業統轄部 モバイル推進室 室長 尾平泰一氏

 効果的な営業活動のためにPDAなどモバイル機器を使ったSFA(sales force automation、営業支援システム)を導入する企業が増えてきた。代表的なのはビール業界。「PDAソリューションフェア2003 in Tokyo」(主催:モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)の「中小企業モバイル活用セミナー」で講演したカシオ計算機のシステムソリューション営業統轄部 モバイル推進室 室長 尾平泰一氏は「営業のプロセスをあらかじめ検証し、規格化するのがモバイルSFA導入のポイントだ」と説明した。

 ビール業界は酒類販売免許の取得が実質的に自由化されることで、量販店などでの免許取得が増加。ビール総販売量に占める量販店の比率は60%にもなっている。そのためビール会社各社も量販店への営業を強化。営業は、店舗ごとに売り場作りを含めた高度な提案が必要で、店頭情報の早期集計や分析、営業戦略の策定が必須となった。従来の営業手法は役に立たず、営業プロセスの明確化や営業担当者間の情報共有、リアルタイムの分析などが必要。その結果、モバイルSFAの導入に踏み切ったビール会社が多くなった。

 尾平氏が説明したあるビール会社の例では、営業担当者が持つPDAに会社のサーバから担当店舗の情報を配信。営業担当者は営業活動の結果をサーバに送信し、上司のチェックを受ける仕組みとなっている。営業担当者は、PDAからWebベースのアプリケーションを使って、担当店舗に関する過去のデータの閲覧や分析などを行うことができる。勤怠管理や経費精算などもPDAを使って行うことが可能。朝夕に会社に立ち寄る必要がなく、「モバイルSFAは直行直帰型の営業に最適」(尾平氏)だという。企業にとっても従来の日報などと違い、モバイルSFAから集めるデータは集計が簡単。最新のデータを営業分析に生かすことができる。

 モバイルSFAの効果は「飛躍的な店頭情報の増加」だ。売り上げや店舗、売り場、競合に関する情報がほぼリアルタイムで集まるようになり、One-to-Oneマーケティングが実現できたという。また、各担当者の営業活動プロセスが明確になったのも大きい。「売る人と売れない人の営業プロセスの違いが明らかになった」(尾平氏)。プロセスの問題点や効果的な点を洗い出すことができ、ノウハウを蓄積できる。

 尾平氏はモバイルSFAを成功させるポイントとして、導入理由の明確化を指摘した。モバイルSFAで実現できることは、営業力の向上や、情報共有、効率改善などがあるが、尾平氏は「最初に取り組むテーマは絞った方が成功しやすい」と強調した。また、PDAについても「使用するときは専用機と同じ」として、業務に不要なアプリケーションを利用者から見えないようにすることや、操作を簡略化すること、セキュリティポリシーに基づき、確実な対応をすることなどを説明した。

(垣内郁栄)

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