EAI市場は飽和、ビトリアが新ビジネスモデルを提示?
2003/9/11
米ビトリア・テクノロジーのインターナショナル・オペレーションズ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ ポール・テイラー氏 |
「単にシステム間をつなぐだけの“連携ソリューション”はもう終わった。現在、EAI市場のトレンドはビジネスプロセス・マネジメント(BPM)へとシフトしている」。米ビトリア・テクノロジーのインターナショナル・オペレーション バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのポール・テイラー(Paul D. Taylor)氏はこのように口火を切り、今後3年間の同社の新戦略を明らかにした。
ビトリア・テクノロジーは、インテグレーション・サーバ「BusinessWare」を中核に、国内外のEAI(Enterprise Application Integration)市場をけん引してきた。本製品は、メッセージ変換機能やコンテンツルーティング機能だけでなく、アプリケーション同士にまたがるビジネスフローを記述・連携できるBPM機能を持つ。そこで昨今はEAIではなく、EAIを含むより広い概念「BPMソリューション」を標榜してきた。
テイラー氏が発表したビジネス戦略は3点ある。1つはBPMを推し進め、業界別ソリューションを確立することだ。現在、同社が「キーインダストリー」として注力しているのは、ヘルスケア・金融・通信の3業界。もともと同社がターゲットとしていた大企業が多く集まっている業界でもあり、実際同社のユーザーもこの業種の層が最も厚い。こうした実績で培ったノウハウを組み込み、全世界に販売していくという。もちろん国内ではNTTコムウェアやアクセンチュアなどのパートナーの協力の下、日本固有のビジネススタイルに合致するようローカライズを施したうえで提供していくそうだ。
2点目は買収策。テイラー氏は、「現段階では具体的にどんな企業を買収していくかは話せない」としつつも、有力SI企業を買収する可能性を匂わせた。3点目は、パートナーシップの確立だ。ここでいうパートナーとは、販売パートナーのほか、ユーザー企業とより密な関係を構築していくことも含まれる。同社が展開する業種別ソリューションをパートナーやアウトソーサーにナレッジとして提供していくほか、先行ユーザー企業に導入したビジネスプロセスのノウハウを汎用化し、他ユーザー企業へ展開するという「ユーザーとのソリューション共同開発」を企画しているという。
テイラー氏は「米国ではEAI市場はすでに飽和状態にあり、今までのようなツールのライセンス販売ビジネスは先細りしていくだろう。そこで有力企業の買収や、業種・業界別のノウハウを実装し、それをナレッジとして蓄えることで、また新しい収益源を生み出すことができる」と述べた。続けて、「ITベンダのほとんどはライセンス販売に頼ったビジネスモデル。市場が飽和したら、新しい収入を得ることができない。ビトリアは“ツール売り”というビジネススタイルからいち早く脱皮し、IT業界の新しいビジネスモデルを確立する」とも。まだ詳細な具体策は見えないものの、今年はまず業界別ソリューションを強化し2004〜2005年にかけて、買収策や新パートナーシップを確立していくという。
現在、同社の売り上げの約6割は北米に集中している。次に欧州の23%、日本を含むアジア地域で12%、南米で6%と、アジア地域での売り上げが伸びる余地は十分にある。テイラー氏によると、「日本市場ではまだEAI市場の伸びは期待できる」そうだ。実際、国内では日産自動車のほかサントリーやNTTなどの大企業を中心に導入が進み、同氏は「この傾向は来年以降も続く」と見ている。そのため、買収やパートナーシップといった施策については、日本市場の動向を見ながら独自に展開することになりそうだ。
(編集局:岩崎史絵)
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