[SunNetwork 2003開催]
サンのソフトウェア戦略第2幕は、勝利への第1歩
2003/9/18
「コストと複雑性をリコールしよう」というプラカードを掲げるサンの会長兼CEO マクニーリ氏 |
マクニーリ氏によると、企業からサンに寄せられるリクエストで最も多いのは、この「ITにかかるコストと複雑性を何とかしたい」ことだという。この日発表された新製品や価格体系は、すべてこの課題に対するサンの答えとなる。「新しい価格体系で、IT業界を徹底的に変えていく」(マクニーリ氏)。
■従業員当たり年間100ドルのサーバソフトウェア
同社 ソフトウェア担当上級副社長のジョナサン・シュワルツ(Jonathan Schwartz)氏は、「企業は導入したソフトウェア製品を統合するのに苦労し、複雑な価格体系に混乱し、多様なソフトウェアライセンスに困惑している。サンはこれらをすべてシンプルにする」と、同社の方向性を明示。この日最初の発表となった「Sun Java Enterprise System」(コードネーム:Project Orion)では、従来ばらばらに提供されていた各種サーバソフトウェアを1つのパッケージに集約しただけでなく、完全に統合して動作する保証をサン自身が行い、アップグレードもすべて四半期ごとに集約。「(1つのパッケージとして)インストール、テスト、パッチ提供などがすべて共通になる」(シュワルツ氏)と、シンプルさを強調した。
そして価格体系は刺激的だ。Java Enterprise Systemでは、導入する企業の「従業員1人当たり、100ドルの年間使用料」となる。インターネットを通じて社外にサービスを提供するような利用方法であっても、追加料金などは一切発生しない。「これは競合企業に対する価格競争ではない。企業のTCOに挑戦する戦いだ」(シュワルツ氏)。
Java Enterprise Systemには、同社のサーバソフトウェア製品として下記のものが含まれる。
- Java System Directory Server(旧SunONE Directory Server)
- Java System Identity Server
- Java System Web Server
- Java System Active Server Pages
- Java System Application Server
- Java System Messaging Server(旧SunONE Messaging Server)
- Java System Portal Server(旧SunONE Portal Server)
- Java System Calendar Server
- Java System Instant Messaging Server
- コンサルティングやトレーニング、Webサイトを通じたアップグレードサービス
■LinuxベースのデスクトップOS
2つ目の発表となる「Sun Java Desktop System」(コード名:Mad Hatter)は、Windowsライクな操作性とアプリケーションを備えたLinuxベースのデスクトップ環境だ。サンにとって、初めての本格的なクライアント・ソフトウェアの発表といえるだろう。
「企業は統合の問題、複雑な価格体系、多様なライセンスに困っている。すべてはシンプルにすべきだ」と語るサン・マイクロシステムズ ソフトウェア担当上級副社長のジョナサン・シュワルツ氏 |
Java Desktop Systemは、Linux OS上でGNOMEデスクトップ環境を構築し、WebブラウザとしてMozilla、電子メールクライアントとしてEvolution、そしてMS Officeとファイル互換性のあるStarOffice 7(日本ではStarSuite)を搭載。企業のデスクトップに必要な機能を備えたうえで、「(マイクロソフトが解決できていない)セキュリティの問題を解決するためのソリューション」(シュワルツ氏)となる。それは単にLinuxがベースというだけでなく、Webベースの「デスックトップマネージャ」を利用することで、管理者が企業内のデスクトップ環境に対して、例えばStarOfficeのマクロ機能のオン/オフといった機能を一括して集中管理できる機能も含んでのことだ。この製品の価格体系も、導入する企業の従業員1人当たり年間100ドルとなっている。
■SPARC/Solarisから、スループット/Java Enterpriseへ
今回の発表はサンの新しい方向性を象徴するものだ。これまでのサンの強みは、SPARCプロセッサによる高性能なハードウェアとSolarisという高性能なOS、この2つの組み合わせによって生まれていた。しかし、徐々に進むハードウェアのコモディティ化とLinuxの台頭によって、その競争力は薄まろうとしている。
そこで今後のサンは、スループットコンピューティングの実現で高性能なハードウェアの基準を引き上げつつ、一方でソフトウェアの強みをOSのレイヤから、Java Enterprise Systemを中心としたミドルウェアのレイヤへ一段上に引き上げようとしている。それはあたかも、マイクロソフトが.NETを発表したことで、同社のコアであったWindows APIから.Net Frameworkへと、APIのレイヤを引き上げたことに対応している。サンのソフトウェア戦略の第2幕が本格的に始まるのだ。
注目すべきはやはり、従業員1人当たり100ドルという価格政策だろう。Java Enterprise Systemの価格は、それを利用してインターネット経由で外部にどんなサービスを提供し、何人の顧客がいようとも従業員数だけで決まる。これは、システムが大規模化すればサーバハードウェアの販売につながるサンだからこそできる価格体系である。とすれば、同じようにハードウェアを販売するヒューレット・パッカードやIBMは、一体これにどう反応するだろうか。そしてBEAシステムズのような、競合するソフトウェア専業ベンダはどう対抗できるだろうか。
(編集局 新野淳一)
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