SAS、業種特化型BIソリューションでライバルに差
2003/9/23
SAS Institute Japan カスタマーサービス本部プロフェッショナルサービス第1部長の田井祥雅氏 |
SAS Institute Japan(SAS)は9月8日、保険業に特化したビジネスインテリジェンス(BI)・ソリューション「SAS Insurance Intelligence Solutions(IIS)」日本語対応版を出荷した。IISはSASが提供する業種特化型BI製品「xIS(Industory Solution)」シリーズの1つ。欧米ではすでに出荷しているが、国内では6月に発表した通信業界向け製品「SAS Telecommunications Industory Solution(TIS)」に続く2番目の製品となる。SAS カスタマーサービス本部プロフェッショナルサービス第1部長の田井祥雅氏は「保険業界は、規制緩和による外資の参入や業界の再編、不況による逆ざやの発生、さらにはチャネルの効率化やビジネススタイルのテコ入れなど、さまざまな課題にさらされています。こうした課題に効果的に対処するため、過去のビジネスデータを分析して法則を見つけ出し、戦略に変えていくのがSASのIISです」と語る。
昨今、BIツールベンダの中では盛んに買収合戦が繰り広げられている。こうした中、業種特化型ソリューションで強みを打ち出しているのはSAS1社のみ。ライバル社が製品・技術の獲得に励む中、ユーザー企業のビジネス課題に“切り込む”ことで、差をつける構えだ。
IISは、保険業界固有の分析モデルを実装した「Insurance Intelligence Architecture」上に、それぞれのビジネス課題を解決するBIアプリケーションを構築して提供する。具体的には、クレームリスクを分析する「SAS Claim Prediction for Insurance」、詳細な顧客セグメンテーションを実現する「SAS Customer Segmentation for Insurance」、クロスセール・アップセールの機会を見分ける「SAS Cross-Sell and Up-Sell for Insurance」、過去のデータから効果的なキャンペーン戦略を導き出す「SAS Marketing Automation for Insurance」、保険会社の戦略ロードマップを作成する「SAS Strategic Performance Management for Insurance」という6つのアプリケーションを用意。最小モデルは、基盤となるInsurance Intelligence Architectureと、どれか1つのアプリケーションをパッケージングする形になる。価格は個別見積もりとなる。
本製品は、(1)将来の拡張性を見越した柔軟な分析アーキテクチャの構築、(2)必要なアプリケーションからの導入が可能、(3)短期ROI拡大の実現、の3点を特徴としている。これまで分析システムといえば多くの場合、担当部署が必要なデータを個別に入手し、限られたスタッフがBIツールを用いるというスタイルがとられていた。ただし、これでは各部署個別に分析システムが作られることになり、メンテナンスの負荷もかかる。だが「xIS」シリーズでは、業界固有の分析データモデルをあらかじめ抽出し、基盤となる分析データベースを構築しておくことで、「将来別の部門がまったく異なる観点で分析したいと言ってきたとき、新たにデータベースを開発することなく、アプリケーションを追加するだけで済む」(田井氏)という。
SAS Institute Japan プロフェッショナルサービス第1部 迫田奈緒子氏 |
こうした分析用の基盤システムを開発するには、最低でも1年半以上の時間がかかるといわれている。しかしSASでは、欧米における豊富な実績例を基に開発プロセスを確立。標準化されたプロセスに、業界特有のデータモデルの抽出といったノウハウを組み合わせ、「最低4カ月あれば、最小モデルを導入できる」(田井氏)とのことだ。短期で導入できるのが最大の強みで、これにより短期のROI拡大も実現できるわけだ。また、基盤となるデータベースがあらゆるビジネス課題に対応できる設計になっているので、「あたかもコンポーネントをはめ込む形で、好きなアプリケーションから自由に導入できる」(プロフェッショナルサービス第1部 迫田奈緒子氏)という。
SAS Institute Japan 営業本部第1営業部金融第1グループ 加藤保光氏 |
現在、保険業界における同社のユーザーはワールドワイドで800社、国内で生保・損保合わせて50社が採用している。主な用途は、入院率や事故率の予測シミュレーションのほか、資産運用など。だが前述したように、保険業界を取り巻くビジネス環境は年を増すごとに厳しくなってきている。そのため、従来は専門の統計解析担当者やマーケターの専用ツールだったSAS製品も、営業部やチャネル統括担当など、ビジネスの現場部門から求められるケースが多くなってきた。そこで「すでに当社のユーザー企業であっても、新規に近い形で現場部門に対し製品をアピールしていく」(営業本部第1営業部金融第1グループ 加藤保光氏)という。また前述の分析基盤にしても、「既存のSASシステムをより大きく取り込む形で設計していく」(迫田氏)ことで、既存ユーザーもIISのメリットを享受できるという。
(編集局 岩崎史絵)
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