コスト半分でWindowsを駆逐する、サンのデスクトップ戦略
2003/10/1
サン・マイクロシステムズのプロダクト・マーケティング本部 本部長 山本恭典氏はサーバサイドでアプリケーションの処理をさせるシンクライアントシステムの「Sun Ray」について、「年末から来年にかけてWANに対応させる」と述べ、エンタープライズ利用を視野に入れた機能強化を図る考えを示した。サンは2004年にもインテルプロセッサ+Linuxの環境で動くSun Rayを出荷する予定で、「日本市場に積極的にアピールしていく」という。
サン・マイクロシステムズのプロダクト・マーケティング本部 本部長 山本恭典氏 |
Sun Rayは1999年にサンが出荷を開始したシステム。データの保存やアプリケーションの処理などをネットワーク上のサーバで行い、クライアントにはその結果だけが表示される。メンテナンスやアップデートはサーバ側だけで行うため、管理コストを大きく下げることができるという。電子メールの受信などもサーバ側で行うため、クライアントがコンピュータ・ウイルスに感染することがなく、「セキュリティ問題とは無縁」というのがサンのアピールポイントだ。Sun RayはこれまでLAN環境でしか利用できなかったが、今年末から来年にかけて行われるとみられる管理ソフト「Sun Ray Server Software」(SRSS)のバージョンアップでWAN環境に対応させる。
サンは、Sun Rayを使ったクライアントPCとWindowsベースのクライアントPCとのコスト比較も発表した。500台のデスクトップPCを5年間運用することを想定。Sun Rayは1人の管理者が500台のPCを管理できるのに対して、Windows PCは1人の管理者が担当できるのは150台。そのため5年間の管理費用はSun Rayが3000万円に対して、Windows PCが6730万円となる。また、ソフトのライセンス料は、Sun Rayが「StarSuite」とSun Rayの利用ライセンスの合算で781万円、Windows PCが、Windows XPと「Microsoft Office」などで5000万円となっている。ほかにヘルプデスクのコストなどを比較して、総額のコストはSun Rayが2億1131万円、Windows PCが4億1730万円と試算。「約半分のコストになる」(山本氏)とアピールした。
コスト面で有利な点があるにもかかわらず、Sun Rayは普及したとはいえないのが現状だ。サンによると国内でのSun Rayの出荷はクライアント数で数千台。アプリケーションが限定される大学やコールセンターなどで利用されているという。サーバの高速なプロセッサがクライアントで利用できるためワークステーション的な使い方もされている。
サンがSun Ray普及のキーと考えているのが、米国ですでに発表された「Java Desktop System」(開発名:Project Madhatter)だ。Java Desktop SystemはGNOMEやStarSuite、Mozilla、Evolutionなどオープンソースソフトをパッケージし、SolarisやLinux、Sun Rayに共通のインターフェイスを実現するシステム。Java Desktop Systemの登場で、Sun Rayが利用できるアプリケーションが広がることになる。サンでは「Sun RayとMadhatterを組み合わせることで、モビリティとセキュリティを実現する」としている。サンはJava Desktop Systemの国内での出荷時期を「来年になる」と説明。国内での利用を促進するためには、アプリケーションの日本語化がポイントになるとの認識で、現在作業を進めているという。また、米国で発表された従業員1人当たり年間100ドルのサーバソフトウェア「Java Enterprise System」については、10月中にも国内での提供内容を発表する予定だ。
ただ、独自技術の開発を自らのコアに据えているサンが、オープンソースソフトに寄りかかった製品を出荷することに対しては疑問を呈する声もある。この指摘に対して山本氏は、「明確な解はない」としながらも「サンはオープンソースソフトに(顧客が)行くのはかまわない」と説明。「しかし、行けるところと、行けないところを明確にする必要がある」と述べた。山本氏は「顧客が真にセキュアな情報システムを求める場合はSolarisを勧める。逆にオープンソースソフトの中で、オープンスタンダードなアプリケーションで間に合うWebサーバや小規模なアプリケーションサーバなどについては、Linuxプラットフォームのアプリケーションを顧客に提案している」と述べ、顧客や必要とされる処理によって、今後もSolarisとオープンソースソフトを使い分けていく考えを示した。
(垣内郁栄)
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