「サンのx86サーバはデルより安い」と繰り返すマクニーリ
2003/10/22
サン・マイクロシステムズは、同社のミドルウェア製品を統合した戦略製品「Java Enterprise System」を発表。本格的にミドルウェア分野への注力を始めた。来日した同社の会長、社長兼CEOのスコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏に、新戦略と今後について聞いた。
――Java Enterprise Systemでは、どんな用途に使おうとも、ソフトウェアの販売価格がその企業の社員数で決まる(1人あたり1万1000円)という新しい価格体系とライセンスを導入した。他ベンダはこれにどう反応すると予想しているか。
米サン・マイクロシステムズ会長、社長兼CEOのスコット・マクニーリ氏 |
マクニーリ氏 マイクロソフトもヒューレット・パッカードもIBMも、どのベンダもわれわれのような方法でソフトウェアを販売することはできないだろう。マイクロソフトがこうした戦略でソフトウェアを販売すれば、(同社のソフトウェアをOEMしている)デルが傾く。ヒューレット・パッカードはソフトウェアのラインアップが不足している。IBMはソフトウェアの統合をやり直さなければならない。しかも、この戦略は顧客からも支持され、アナリストも高く評価している。サンだけがそれを実行できるベンダだ。
――Java Enterprise Systemは非常に安価だ、低価格化によって売り上げが上がったとしても利益に貢献するのか?
マクニーリ氏 ソフトウェアの流通コストは事実上ゼロだ、しかもJava Enterprise Systemはすでに開発されたソフトウェアである。つまり、販売価格のすべては粗利益になる。もちろん、四半期ごとのアップグレードを行うし、そのための研究開発費は経費となる。しかし、常に製品を向上させていくという保証がなければ、その製品を顧客が買うことはないだろう。
――Linuxについてどう考えているか。
マクニーリ氏 もし顧客がLinuxを求めているのであれば、サンはそれを提供できる。サンはLinuxサーバを販売しているし、Java Enterprise SystemはLinuxサーバ上で動作するようになる。しかもサンは、(Java Desktop Systemで)Linuxのデスクトップ製品を提供する唯一の会社だ。そして、Linuxが走るサンのx86サーバはデルのマシンよりもより安い。もう一度いおう、われわれのx86サーバはデルのマシンより安いのだ。聞こえたかな? われわれのx86サーバはデルのマシンよりも安い!(笑)
――ハードウェアのコモディティ化が進んでいる。サンもコモディティ化に巻き込まれるのか。
マクニーリ氏 コモディティ化の定義は、仕様が長期間変わらないことだ。サイズや重さや、性能が変わらないことがコモディティの条件だ。例えば釘(くぎ)やコーラなどはコモディティの例だろう。コモディティ製品の差別化は、マーケティングや広告しかない。常にイノベーション(革新)が求められるIT業界には、コモディティは存在しないといっていい。
かつて、コカ・コーラはコーラ製品を「ニューコーク」に改良したが売れず、「クラシックコーク」として元に戻した。しかし、ITの世界ではこんなことはできない。インテルがItaniumに失敗したとして、Pentiumに戻せるだろうか? マイクロソフトがWindows 2000に失敗したからといってWindows 98に戻せただろうか? ITの世界でコモディティ化が進んでいるとはいえない。そしてイノベーションこそ差別化の要因だ。
――いままでサンはテクノロジのイノベーションが中心の会社ではなかったか。今回のJava Enterprise Systemでは、パッケージングとプライシングに大きな特徴がある。社内に変化があったのか?
マクニーリ氏 それは分析のしすぎというものだ。いままでもサンはTCP/IPなどの技術的なイノベーションを起こしてきたが、例えば、バークリー版UNIXやNFSは最初のオープンソースモデルとしてのイノベーションといっていいだろう。今回のJava Enterprise Sytemはビジネスモデルでの新しいイノベーションだ。
――ヒューレット・パッカード、IBMなどの競合とどう戦うのか。
マクニーリ氏 サンの最大の強みは、システム全体を提供していることだ。プロセッサ、サーバ、ストレージといったハードウェア、そしてOSやミドルウェアなどのソフトウェア群。すべてのパーツを自社で提供できるうえ、それぞれコンポーネントはオープンなインターフェイスでつながっているため、顧客はコンポーネントごとに入れ換えることもできる。
そのため、サンはほかのベンダとも、システムインテグレータとも、どんなパートナーとも組むことができる。こうした中立的な立場でいられることは有利な点だ。そして、Java Enterprise SystemやN1など、いま社内によい動きが表れてきている。これらを合わせて考えれば、今後5年で必ず大きな収穫があると考えている。
(編集局 新野淳一)
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