「デバイス同士が無線通信する」インテルの未来像
2003/10/29
米インテル インテル・フェロー兼コミュニケーションズ・テクノロジ・ラボ・ディレクタ ケビン・カーン氏 |
インテルは10月28日、「インテルにおけるワイヤレス研究戦略」と題し、無線技術の研究成果を発表した。米インテル フェロー兼コミュニケーションズ・テクノロジ・ラボ・ディレクタのケビン・カーン(Kevin C. Kahn)氏は、「2005年から2006年にかけて、ワイヤレスLAN、ワイヤレスWAN、ワイヤレスPAN(パーソナル・エリア・ネットワーク)が統合され、デバイス同士の相互通信が可能になる。ユーザーは意識することなく、シームレスにワイヤレスデバイスを利用できるようになるだろう」と述べ、このような未来を実現する同社の取り組みを語った。
次世代無線技術を実際の製品に実装する場合の課題として、カーン氏は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)への技術統合を挙げた。「CMOSへの統合によって、デバイス開発側には、低コスト、高パフォーマンス、短期の開発期間といったメリットが発生するだろう」と述べた。
次に新たな無線技術へのアプローチとしてカーン氏が挙げたのは、スマート・アンテナとウルトラ・ワイド・バンド(UWB)、再構成可能なベースバンド・アーキテクチャについてだ。
スマート・アンテナとは、ユーザー数を増大させる空間分割多重アクセス(SDMA)や、通信距離やスループットを改善するMIMO(マルチ・インプット・マルチ・アウトプット)による無線技術のアーキテクチャである。カーン氏は「このアーキテクチャを採用することで、通信容量を(シングルチャネルの無線規格利用と比較して)4倍に向上させることができる」と、その目論みを述べた。
ウルトラ・ワイド・バンドについては、「ナローバンドシステムと相互に共存が可能で、高いデータ転送レートを実現するものとして開発中」と発表した。UWBは、次世代のワイヤレスPANに利用されるという。(UWBの)規格の標準化も同時に進めている。同社が目指すUWBの規格が標準化されることは、「IPネットワーキング、非IPのピア・ツー・ピア(W1394)、ワイヤレスUSB、Bluetoothなど、複数のアプリケーションが利用できる共通の無線プラットフォームの開発」を意味するものだ。
再構成可能な通信ベースバンド・アーキテクチャとは、802.11a/b/g、802.11nなど特定の周波数帯に限定せず、広い範囲の周波数帯に対応可能とする技術だ。カーン氏は、「個々の周波数帯の処理要素を再構成し、それらを同時に対応させることで、ユーザーは、同じハードウェアで異なる周波数帯を利用できるようになる」と語った。
最後にカーン氏は、インテルが2003年初頭から提唱しているマルチホップ・ワイヤレス・ネットワークを用いたメッシュ・ネットワークについて解説した。メッシュ・ネットワークが普及すれば、「ワイヤレス・デバイスが複数の無線接続間でメッセージのルーティングを行うようになる。アクセス・ポイントとクライアントの依存関係はなくなり、無線機能を備えたすべてのデバイスが、ルータの役割を果たすことになる」とカーン氏は語る。
インテルが目指す無線技術の将来像とは「すべてのコンピューティング機器が相互に通信するようになる」未来のこと。カーン氏は、「米国FCC(米連邦通信委員会)が周波数利用の規制緩和に前向き」と政府関係機関の協力を明らかにするとともに、次世代無線技術の製品化の実現について、「多次元的な」(カーン氏)業界からの協力が必要と講演を締めくくった。
(編集局 富嶋典子)
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