TravelXMLはネット系旅行サービスに対抗できるか?
2004/2/10
EDI推進協議会は「EDI導入先進業界の最新動向」と題した研修会でTravelXMLと旅行業界の活動を報告した。旅行業界のEDIへの取り組みは1992年にさかのぼり、XMLによる仕様策定は2001年から始まった。TravelXMLは昨年11月に1.0が勧告となり、現在1.1が勧告案だ。
XMLを採用した産業別のEDIでは、ニュース配信のNewsML、電子部品や半導体業界を中心としたRosettaNetといった成功例もあるが、産業界全体から見ればごく一部にしか導入が進んでいない。
TavelXMLは、旅行業ビジネスフローのうち、ホテル・旅館といった施設の提供者と旅行代理店とを結ぶBtoBの範囲に限定した電子商取引の仕様で、その作業成果について日本旅行業協会 情報化推進担当部長 佐藤進氏は「TavelXML 1.1の勧告も間近で標準化の第1フェイズはほぼめどがついた。今年は第2フェイズとして、2004年末に期限を切って実装に向けた作業を行っていきたい」と語り、実用化の工程を急ピッチで進める意向を示した。
この背景には、楽天トラベルに代表されるネット系旅行会社の台頭がある。「彼らは標準化を待たずに、新しいビジネスモデルを送り出してくる」と佐藤氏は懸念を隠さなかった。ネット系企業の独自システムによるホテル・旅館の囲い込みが進めば、TravelXMLの存続自体が危ぶまれる。同氏によれば、これ以外にもTravelXMLの課題として次の2点を挙げた。
旅行電子商取引促進機構 主幹事 鈴木耀夫氏 |
JTBや近畿日本ツーリストなど大手旅行代理店がすでに導入済みのレガシーシステムをどのタイミングでTravelXMLのシステムに移行させるかが第1点。旅行代理店は、以前から独自システムを導入しており、ホテル・旅館側は複数のシステム向けに手作業で空室状況などを入力しているのが現状だ。これを標準化によって統合できれば理想であるが、既存システムのリプレイスは大きなコストを要求する。TravelXMLをどの時点で導入するかは、いまのところはっきりしていない。
もう1つの課題は、ホテル・旅館の予約から請求までを処理するPMS(プロパティ・マネジメント・システム)導入の遅れである。フロントキャッシャーのPMSの普及は進んでいるというが、宿泊施設の情報発信や予約管理といったシステムまでは手が回らないようだ。宿泊施設業者の経営体力に大きな開きがあり、業界全体で一気にシステム化する状況には至っていない。
TravelXMLの動きが遅い点について、旅行電子商取引促進機構 主幹事 鈴木耀夫氏は「2003年度から利用促進部会を立ち上げて、特に旅館を対象とした利用促進のための検討を始めている。技術以外の側面での問題解決が急務だ」と語った。
(編集局 上島康夫)
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