広告ビジネスのドロドロを解消させるAdsMLとは?

2004/2/6

 PAGE2004のセミナーとして2月5日に開催された「ニュース配信XMLフォーマット『NewsML』説明会」(日本新聞協会、XMLコンソーシアム、日本電子出版協会、主催)で、広告ビジネスに特化したXMLフォーマット「AdsML」(アズエムエル)の概要が発表された。

日本システム技術 営業部 企画担当 林克美氏

 出版メディア向けのXMLフォーマットとしてはNewsMLが先行しているが、AdsMLはNewMLからは独立した標準技術としてAdsMLコンソーシアムが統括しており、2003年10月にはAdsML 1.0が発表されている。同コンソーシアムはドイツに本拠を置く欧州メディア・グループのIfraと、米新聞協会(Newspaper Association of America:NAA)がサポートする標準化団体だ。

 講演を行った日本システム技術 営業部 企画担当 林克美氏は、「2000年前後から、出版広告業界では掲載紙をクライアントにチェックしてもらう業務をオンライン化し、7割以上のコストダウンを達成した。このように、広告のワークフローを電子化すれば工程の短縮やコスト削減につながり、業界全体が活性化する。これを実現するために生まれたのがAdsMLだ」と語った。

 AdsMLはXMLをベースとしたデータ交換の統一フォーマットを策定し、アプリケーションによる広告業界のワークフロー自動化を目指すもの。企画→受発注→コンテンツ制作→掲載→決済という広告のライフサイクル全体を包括するという壮大な計画だ。コンテンツは「AdsML Item」でラップされたXMLファイルとして、ビジネスノード間で受け渡しされる。AdsMLのラッパには、コンテンツのカテゴリ(求人広告か商品広告か、など)や掲載日、受発注データなどが記載され、AdsMLプロセッサを介して正しい経路で配送される。従来は人手により、企業ごとのローカルルールによって処理されていた繁雑な作業が大幅に軽減される、というシナリオだ。

 AdsML 1.0のフレームワークは、業務間の相互作用を記述する“ACI”、既存データフォーマットとの差異を埋める“マトリクス”、XML構造を定義する“エンベロープ”という3つの柱で構成される。林氏は「広告業界でもすでにEDIの導入が進んでおり、各種のデータフォーマットが混在する状況だ。AdsMLはこれらを置き換えるものではなく、既存の規格を生かしたままAdsMLでラップする情報インフラを目指している」とし、欧米ですでに導入が始まっている広告業界向けのEDI運用システム(AdConnexion、CREST、SPACE)をAdsMLに融合していく方向性を示した。

 AdsMLのような海外発のビジネス系標準フォーマットを導入するには、日本固有の商習慣との整合性を取る必要がある。さらに、日本の広告ビジネスは東京に集約されているため、国土の広大な米国や異なる文化の集合体である欧州に比べ、電子フォーマットによるデータ標準化/プロセス自動化のもたらす恩恵はイメージしにくい。日本への普及について、林氏は「標準化による生産性の向上は新たなビジネスチャンスを生みすので、日本でも早くAdsMLの導入に向けて動き出してほしい」と述べるにとどまった。

(編集局 上島康夫)

[関連リンク]
The AdsML Consortium
XMLコンソーシアム

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