SolarisエンジニアをHP-UX陣営に取り込むHPの秘策

2004/2/11

 日本ヒューレット・パッカードは2月9日、UNIXサーバ製品ファミリ「HP Integrityサーバ」にエントリモデルの1U薄型ラックマウントサーバ「HP Integrityサーバ rx1600」を追加し、ローエンド市場におけるシェア拡大を図ると発表した。

◇ 「HP Integrityサーバ rx1600」登場の背景

日本HPエンタープライズ・システム事業統括 エンタープライズストレージ・サーバ統轄本部 ビジネスクリティカルサーバ製品本部 本部長 榎本敏之氏

 今回の新モデル発表は、国内のUNIXサーバ市場におけるイニシアティブ獲得が目的である。特に、ローエンドモデルの投入は、PCサーバが担っていた市場をUNIXサーバで代替しようとする狙いがあるが、大きな視野でみれば、HP-UXをプラットフォームとするUNIX市場そのものの拡大を画策していると考えることもできる。ただ、日本HPとしては、旧コンパック・ブランドのPCサーバも同様に販売しており、市場における“バッティング”が懸念されるところ。日本HPエンタープライズ・システム事業統括 エンタープライズストレージ・サーバ統轄本部 ビジネスクリティカルサーバ製品本部 本部長 榎本敏之氏によると「製品による市場の区分けはできており、問題はない」ということだ。

 また、今回のUNIXサーバの新製品は、国内UNIXサーバ市場で日本IBMと双璧をなす強さを誇っていたサン・マイクロシステムズの地位を「食う」(榎本氏)という戦略上の武器としての位置付けもある。米サンが米AMDと提携し、近々新製品を投入してくるが、榎本氏にいわせれば、「(旧モデルとの)CPU間の互換性が完全に保たれているという話は聞いたことがない」ということで、「いまこそ、Solarisの市場をHP-UXに置き換える絶好の機会」だと、明確にサンを仮想ターゲットとした戦術を練っている。実際、国内のUNIXエンジニアの多くは、Solaris技術者なのだが、この機会は「(Solaris技術者の)HP-UX技術者への移行を促す機会でもある」(榎本氏)という。

 日本HPとしては、いまこそ“Itanium2”と“HP-UX”に注いできた膨大な技術投資の“正しさ”をマーケットの場で証明したいところだろう。最大の仮想敵は技術面では日本IBM(あるいはバックにいる米IBM)で、国内の販売チャネルを牛耳っているという意味では、NEC、富士通の存在も無視することはできない。が、この段階で最も御しやすいと同社が判断したのがサン・マイクロシステムズであることは疑い得ない事実である。今回の日本HPの発表の裏にはそのような背景があるのである。

◇ 「HP Integrityサーバ rx1600」のスペック

 rx1600の筐体は1U(高さ約44mm)の薄型モデルながら、低電圧版インテル Itanium(アイタニアム)2プロセッサを2基まで搭載できる。エンタープライズ向け4wayまでのサーバ用にHPが独自に開発した「HP zx1」を採用。榎本氏は、「HP zx1により、エンタープライズ向け4wayサーバで実現されているパフォーマンスや高信頼性を1Uの筐体にパッケージした」と話す。

HP Integrityサーバ rx1600

 rx1600は、容量メモリは最大16GB、高速PCI-X I/O 2スロット、ホットスワップ対応内蔵ディスク2個(最大292GB)の拡張性を備える。また「HP Integrityサーバ」ファミリの特徴であったホットスワップ、HDD、メモリチップスペア、DMR(Dynamic Memory Resilience不良メモリの動的切り離し)などの機能を装備し、HP-UX環境においてはクラスタ構成をサポートできる。榎本氏は、「これまで1Uサーバの利用用途とされていたエッジサーバのみではなく、企業内でSolarisが利用されていたようなフロントOracle 9iでの2Uクラスタに格納していたアプリケーションサーバやDBサーバなどのリプレイスに向いている」と新しい1Uサーバのパフォーマンスの高さをアピールした。

 HP-UX(HP-UX11i v2)対応版、Linux(Redhat Linux AS2.1)版が2004年2月下旬、Windows(Windows 2003、Enterprize Edition)版が2004年後半の出荷となる。rx1600をItanium 2 1GHz 1way、512MBメモリ、36GB HDD)で構成した場合の参考価格は468,000円

 同時に、2003年7月に発表した2Uサーバ「HP Integrity サーバ rx2600」にも新CPU2製品が追加される。低電圧Itanium2(1GHz/1.5MB)プロセッサとItanium2(1.4GHz/1.5MB)プロセッサの2製品が追加され、2004年後半に出荷される。rx2600を最新のプロセッサにアップグレードできる。

(編集局 谷古宇浩司、富嶋典子)

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