システム統合を一瞬で完了させるIBMの秘密兵器
2004/2/26
システム統合に取り組むとしたら、数十億円の大がかりなプロジェクトになるのは当然、と一般的に思われている。このコストを正当化できるのは大企業や官庁だけで、一般の企業は蚊帳の外だ。もし、システム統合のコストと納期が限りなくゼロに近づくとしたら、IBMの提唱する「eビジネス・オンデマンド」はIT業界を一変させることだろう。
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 テクノロジー・エバンジェリスト 米持幸寿氏 |
「IBM FORUM 2004」で講演した日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 テクノロジー・エバンジェリスト 米持幸寿氏は、IBMエマージングテクノロジ ロッド・スミス(Rod Smith)氏の次のような発言を披露した。「もしインターフェイスの標準化がWebサービスによって達成され、それが本当に実用化されるならば、これまで1年かかっていたシステム統合は1秒で終わるだろう」。
これは現時点でのWebサービスに対する一般的な認識とはかなりかけ離れたストーリーに聞こえる。この点について米持氏は「サービス指向という概念が重要だ。あるビジネスプロセスを実行するプログラム群をサービスという単位で扱い、サービス間の連携は標準化されたWebサービス(SOAPとWSDL)で結ぶ。これによって、特定のプラットフォームやベンダ製品の内部で閉じていたシステムが、環境の違いを乗り越えて簡単につながるようになる。システム連携の柔軟性が向上することは、開発の高速化、低コスト化を推進するだろう」と述べた。ビジネスプロセスに変更があっても、新たなシステム開発は不要で、サービスをつなぎ変えて対応できるというわけだ。
米持氏の認識では、Webサービスは2004年から第3世代に入った。1対1のRPC的用途が第1世代、システム統合が第2世代、そしてシステム内部に複数存在する個々のサービスが網の目のようにつながり合うサービス指向の実用化が、まさにこれから始まるという。
「ただし、本当にSOAPでいいのか? これはよく考えてもらいたい点だ。すべてをSOAPでつないだら、とてつもなくパフォーマンスが低下する」と、米持氏は指摘した。インターネット越しにサービスを呼び出すならSOAPでいいが、もし必要なサービスがローカルマシン内にあればJavaオブジェクトとして、同一システム内にあるならEJBとして呼び出せばいい。「ローカル、RMI/IIOP、SOAPといったプロトコルの違いを隠ぺいするインターフェイスを用意し、サービスを連携させるミドルウェアが必要なプロトコルを自動的に選択する仕組みをWebSphereに搭載してある」(米持氏)。
サービス同士が自在につながり、ビジネスプロセスの変化にも迅速に対応できるというキャッチフレーズとともに語られるサービス指向だが、現実にはサービス間のトランザクション、メッセージ信頼性、セキュリティといったインフラ機能を提供するプラットフォームが製品化されなければ、実用段階には降りてこない。
IBMのサービス指向型プラットフォーム製品について、米持氏はリリース時期は明言を避けたものの、「そう遠くないタイミングで出荷できる」と語り、「WSAD IE 5.1 BPELエディター」とクレジットの入ったツールの画面ショットを披露した。BPEL(正式にはBPEL4WS:Business Process Execution Language for Web Services)とは、BEA、IBM、マイクロソフト、SAP、Siebelなどが参加してOASISで標準化作業が続けられているWebサービスのためのビジネスフロー記述定義言語である。
Webサービスのビジネスプロセス管理に必須の技術は、現在進行形の標準化作業が多数あり、多くのベンダが覇権を争っている。また、ビジネスプロセスにフォーカスした製品も激戦区となりつつある。IBMからBPEL製品が登場すれば、勢力地図に少なからず影響を与えるだろう。
(編集局 上島康夫)
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