グリッド+Webサービスを実ビジネスで使うには
2003/12/26
日本IBM、アドソル日進、TG情報ネットワーク、エクサの4社からなる「jStart共同研究会」はグリッド・コンピューティングの業界規格「OGSA」(Open Grid Service Architecture)をベースにグリッド・コンピューティングとWebサービスを組み合わせた商用サービスの実証実験を実施し、2003年12月25日に開催されたXMLコンソーシアムのセミナーでデモンストレーションを行った。共同研究会に参加した日本IBMシステムズ・エンジニアリング オンデマンド・テクノロジー 高橋辰徳氏は「商用のグリッドがデータベースを中心としたデータグリッドサービスになるのは間違いない」と指摘し、グリッドの商用展開が十分可能であるとの認識を示した。
日本IBMシステムズ・エンジニアリング オンデマンド・テクノロジー 高橋辰徳氏 |
研究会では、地域にある複数の病院から、それぞれの病院に保存してある電子カルテを参照できるシステムを仮想的に構築し、実証実験を行った。患者の病状などを動画のコンテンツで配信できるようにもした。研究会が構築したのは、複数の異なる種類のデータベースのデータを統合し、1つのデータベースのようにアクセスできるデータグリッドと、利用していないコンピュータのCPUをネットワーク経由で統合し、高い処理能力を実現するプロセッシンググリッド。
高橋氏が行ったデモでは、医師がシステムのポータルサイトにログオンし、患者の保険証番号を入力すると、ほかの病院にある電子カルテが表示された。電子カルテ自体のデータは各病院が保管しているが、医師がアクセスする地域医療情報センターのリポジトリが、どのデータがどのデータベースに保存されているかを把握しているため、医師のリクエストに応じて電子カルテを取得できる。グリッド構築ツールの「Globus Toolkit 3.0」を使いデータベースの情報を仮想的に統合し、データグリッドを構築。各データベース間の通信はSOAPで行い、医療情報のXML標準規格「MML」でデータを配信し、電子カルテを生成した。
プロセッシンググリッドの実験は、医師が参照する動画データの配信で実施した。医師のリクエストに基づき、データベースに保存してある患者の動画データを瞬時にエンコーディングし、ポータルサーバに配信。複数コンピュータのCPUを使うことで安定、高処理能力を実現できることを示した。
デモシステムのOSはクライアントPCを除き、すべてLinuxを採用。仮想データベースはGlobus Toolkit 3.0とともにTomcat 4、IBMの「XML Extender」を使ってXML DBとして実装した「DB2 Universal Database V8」を使った。ポータルサイトのインターフェイスはMacromedia Flashを使って構築した。
Globus Toolkit 3.0を使ったグリッド・コンピューティングとWebサービスを組み合わせたシステムについて、高橋氏は「Globus Toolkit 3.0がセキュリティやセッション管理をインフラとして実装しているため工数削減が見込める。また、システムの負荷分散、フォールトトレラントを目的としてもグリッドは利用できる」とメリットを強調。「インスタンスによる状態管理で高度なユーザー管理が行え、インスタンスのライフサイクルをきめ細かく制御できる」と述べた。
一方、共同研究会に参加したアドソル日進の荒本道隆氏は「Globus Toolkit 3.0が安定して24時間運用できるかについては再評価が必要」としたうえで、「Globus Toolkit 3.0は基本的な機能を提供しているので、大規模なシステムを効率的に構築するためには、より上位のミドルウェアの必要性を感じる」と指摘した。
(編集局 垣内郁栄)
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