ボーランドから見たEclipseの正体
2004/2/28
米ボーランド 開発ツール事業部 バイスプレジデント&ゼネラルマネージャ ジョージ・パオリーニ氏 |
米ボーランドで主にJava環境の開発ツールを担当するバイスプレジデント&ゼネラルマネージャ ジョージ・パオリーニ(George Paolini)氏が来日した。2003年2月に来日した際は、統合開発環境である「Borland Enterprise Studio 5 for Java」と「Borland Together Edition for JBuilder」の発表を行った。今回の来日目的も昨年と同様、この2つの製品のバージョンアップ版をアピールすることである。
パオリーニ氏から見て、この1年間で、ソフトウェア開発を巡る動きは大きな変化があったのだろうか。ツールの開発という立場からトレンドを俯瞰(ふかん)するパオリーニ氏に、開発環境をめぐるさまざまな動きについて聞いた。
「昨年と比較して、Webアプリケーション開発の需要が確実に増えてきたと感じている。同時に、UMLを活用したモデリングという作業に対するエンジニアの需要が拡大してきている」とパオリーニ氏は話す。同社が今回発表した製品に、価格が10万円を切る「Borland
Together Edition for JBuilder X Developer」がある。モデリングツールは高価である、というイメージを払拭(ふっしょく)するためにも、まずはボーランドが「ゲームのルールそのものを変えてしまう」という戦略が背景にあるようだ。
つまり、従来の、大規模案件を展開する大規模SI企業に対して高価なモデリングツールを提供するという販売モデルを脱却し、中小規模SI企業をターゲットに、低価格なモデリングツールを大量に販売していくというビジネスモデルを作り上げることが、まずは2004年度の同社の挑戦になる。パオリーニ氏は「現場の開発者が望んでいることを実現しているだけだ」というが、確かに、モデリングツールの低価格傾向と普及率の向上は、最近のソフトウェア開発ツール市場における1つのトレンドであるといえる。
このことは、Eclipseをはじめとするフリーの開発ツールの普及という要素も関係すると考えられるのだが、パオリーニ氏によると「イメージと実際は少々事情が異なる」そうだ。つまり、「Eclipseが無料で使えるのはJVMを含むフレームワークだけであり、実際には有償であるプラグインを組み込まなければ使用できない。この“隠れたコスト”がバカにならないのだ」とパオリーニ氏はいう。さらに、Eclipseに対する厳しい見方として「さまざまなプラグインを組み込みながら、個々のエンジニアが独自の開発環境を構築してしまい、開発チーム(あるいは組織が)混乱状態に陥る可能性がある」とも。「もし、JavaベースのIDEが必要ならJBuilder Foundationをお薦めする。もちろんフリーのIDEで、Eclipseよりもプラグインの数は多い」。
いずれにしても、個人の開発者にとって、開発環境は基本的に無料か無料に近いコストで構築可能という「イメージ」(パオリーニ氏)があり、それが高価なモデリングツールの低価格化というベンダの製品・販売戦略を引き出した。それが実体と異なるかどうかは、実はあまり関係はない。
ボーランドは、今回の新製品を発表するにあたって、「モデリング」「UML」などのキーワードを全面に押し出しながらプロモーションを展開する計画である。通常、「モデリング」「UML」と聞けば、ソフトウェア開発の上流工程を連想するものだが、ボーランドのアプローチは「コーディングを行う下流工程の開発者がモデルにも手を加えることができる利点を強調することで、開発作業をスムーズに展開する」(パオリーニ氏)ことにある。Model Driven Architecture(MDA)のような、モデルがソフトウェア開発において最も重要視されるプロセスとは「逆行する」アプローチである。「Webアプリケーション開発における“正しい指針”として、あるいは開発作業を正しく導くナビとしてモデルを位置付け、モデリングの機能を開発ツールに統合していくことが重要」とパオリーニ氏はいう。
(編集局 谷古宇浩司)
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