電子商取引はなぜ利用されない?

2004/3/16

電子商取引推進協議会 主席研究員 斉藤幸則氏

 電子商取引推進協議会(ECOM)が2003年10月から11月にかけて行った国内中小企業の電子商取引利用に関する調査で、70%の中小企業が電子商取引の仕組みを導入していながら、「伝票やデータフォーマットが業界・企業によって異なり困る」ことなどから利用率が低迷していることが分かった。同協議会の主席研究員 斉藤幸則氏は3月15日、XMLコンソーシアムの月例セミナーで講演し、「電子商取引に関するシステム設計・開発の問題への対策は、XML技術を適用しないと成り立たない」と述べ、ECOMとして中小企業向けの電子商取引推進策を立案していく考えを示した。

 調査は日本情報処理開発協会 電子商取引推進センターなどIT、電子商取引に関係する業界団体に所属する中小企業5000社をピックアップし、アンケートを送付。回答があった837社のアンケートを集計した。回収率は17.2%だった。

 837社のうちで、電子商取引を行っているのは、購入目的で35%、販売目的で70%だった。調査対象がITを指向する企業だったために高い導入率となった。一方で、商取引全体に占める電子商取引の割合は10%以下の企業が約半分を占めた。つまり、1カ月に外部との取り引きが100件ある場合、そのうちの電子商取引の割合が10件以下ということだ。電子商取引の割り合いが40%以上としている企業は購入で3%、販売で6%。電子商取引のための仕組みは用意しているが利用していない、というのが多くの中小企業の姿のようだ。

 調査で分かった電子商取引の最大の問題点は「伝票やデータフォーマットが業界・企業により異なる」ということで、58%の企業が指摘している。複数の企業と電子商取引を行う場合、それぞれの企業でデータフォーマットが異なるためにプロセスを完全に機械化させることができず、一部でプリントアウトし手入力を行うなど非効率な部分が出てしまう。ほかの問題点としては「電子商取引の導入費、運用費が高い」(36%)、「人的環境が整っていない」(32%)、「専門知識がない」(31%)、「セキュリティ対策が難しい」(31%)などだった。

 ECOMではこのような問題点を解決するために、XMLを利用し、中小企業が利用する電子商取引の標準化を検討している。斉藤氏が示した標準化のための解決策は5つ。1つ目は電子商取引、EDIのサーバのデータをXMLに統一し、XMLスタイルシートをクライアントPCに配布する方法。同じ電子商取引を利用する企業が、同じXMLスタイルシートを使うことでデータフォーマットを統一できる。2つ目は標準メッセージ変換システムを活用する方法。業界別のEDIに対応するメッセージ変換システムを開発し、どの業界EDIのデータでも同じフォーマットに変換され、業界を越えてデータ交換をできるようにする。

 3つ目はXMLへの対応を強めた「Microsoft Office System 2003」を活用する方法。電子商取引のデータのやりとりをXMLに統一することで、画面表示などを自在にコントロールできる。社内のほかのシステムとの連携も容易になる。「InfoPath 2003」「Excel 2003」を活用する方法が考えられ、すでに石油化学工業会ではExcel 2003を使った電子商取引を研究しているという。

 4つ目は電子商取引を実現するASPサービスを業界別に開発する方法。ASPサービスとして仕様を統一するため、各企業はデータフォーマットの違いに戸惑うことがなくなる。ほかの業界のASPサービスと相互接続することで、やりとりできる企業が増えることが期待できる。5つ目はASPサービスをベースにクライアント環境をInfoPath 2003などXMLに対応させる方法。ASPによる相互接続性の高さと、XMLによるバックエンドシステムとの連携のメリットを享受できる。

 斉藤氏は「電子商取引、EDIの普及拡大を図るには、日本企業の99%を占める中小企業への導入が不可欠」と指摘。「中小企業でも導入可能な標準EDIシステムの開発・提供が求められる」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
電子商取引推進協議会(ECOM)

XMLコンソーシアム

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