OASISもSOA合唱隊に参加、仕掛けたのはナゼかアドビ
2004/4/7
eビジネス標準標準化団体、OASISの社長兼CEO パトリック・ギャノン(Patrick Gannon)氏は4月5日、イー・ブリッジ主催のプレスミーティングで講演を行い、OASISとW3Cの違いについて次のように説明した。
OASIS 社長兼CEO パトリック・ギャノン氏 |
「W3CはWeb技術の基盤となる分野を広く扱う、いわば水平方向の標準化を担当している。作業が遅れがちになるのは、多くの関係者の意見調整に手間取るからだ。これに対してOASISは、特定の技術に照準を合わせた縦方向の標準化を進める団体である」。
また、標準化プロセスについては、「eビジネスに関する先進的な技術がベンダから提案されると、OASISにTC(テクニカル・コミッティ:技術委員会)が設立され、関連するベンダや個人、団体が参加して議論を進める。プロプライエタリな技術をオープンな標準化技術に移行させるのがOASISの役割といえる」と語った。ベンダ主導で開始され、主要ベンダから派遣されたメンバーが中心となって標準化を進めるのが、W3Cとの大きな違いというわけだ。
W3Cの標準化作業が遅々として進まない状況を苦々しく思う人も多いだろう。OASISのようにメジャーなベンダの強力な後押しで一気に標準化作業を前進させるのは、決して悪いことではない。ただ、Webサービス関連仕様に見られるように、同じ目的を持った標準技術がW3CとOASISで並行して進められ、ユーザーの混乱を招いているケースもある。
例えば、Webサービスのコレオグラフィ記述言語では、W3CのWSCI(Web Services Choreography Interface)を追い越して、いまやIBM、マイクロソフトらが進めるBPEL4WS(Business Process Execution Language for Web Services)がデファクトの地位を奪い取る勢いだ。一方、Webサービス・トランザクション仕様ではオラクル、サン・マイクロシステムズらがOASISに提出したWS-CAF(Web Services Composite Application Framework)に対して、マイクロソフト、IBM、BEAシステムズの3社は標準化団体未提出のWS-Transactionを2003年9月に立ち上げて、主導権争いを展開している。
OASISはベンダ駆動であるが故に、ベンダ連合体の綱引きに巻き込まれる宿命を負っているといえる。スピードを取るかベンダ中立を守るか、その立場の違いがOASISとW3Cの違いである。以下に、ギャノン氏が紹介した今年新設の主なTCとベンダの関係をまとめてみよう。
「ebSOA」は既存のebXMLをWebサービス関連仕様と統合する動きだ。「ebXMLは複雑なビジネス間取引を世界規模で定義する堅牢な仕様で、これに対してWebサービスは単純なアプリケーション間のメッセージ交換を定義したにすぎない。両者を補完的に組み合わせるために、SOAの概念を取り入れようとする試みだ」(ギャノン氏)。
いまや、エンタープライズ系のベンダはこぞってSOA(サービス指向アーキテクチャ)の大合唱を繰り広げているが、このTCの議長はデザイン・ツール・ベンダのアドビシステムズで、SOAの中心ベンダ(IBM、Tibcoなど)は参加していない。
グリッド・コンピューティングがらみの新しいTCも紹介された。WSRF(Web Services Resource Framework)は分散されたリソースをWebサービスによって活用するグリッド・コンピューティングの考え方を取り入れたもの。また、WSN(Web Services Notification)はグリッドコンピューティングにおいてWebサービスの起動や終了をコントロールし、通常は隠ぺいされているWebサービスの内部状態を通知するための技術である。
グリッド・コンピューティングはもともとOGSI(Open Grid Services Infrastructure)の主導で進められてきた標準技術だが、グリッドの実現にはWebサービスを使うという合意がなされたため、OASISの内部にTCを作って今後の活動を進めていくことになった。その過程で結成されたのが上記2つのTCであるという。そして、どちらのTCにもIBMが参加していることはいうまでもない。
(編集局 上島康夫)
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