[VERITAS VISION 2004開催]
この1年でどこまで進化? ベリタスのユーティリティ戦略

2004/5/7

VERITAS VISION 2004初日に講演した米ベリタスソフトウェア 会長兼社長兼CEO ゲイリー・ブルーム氏

 米ベリタスソフトウェアのプライベートイベント「VERITAS VISION 2004」が5月4日(現地時間)、米国のラスベガスで始まった。同社の会長兼社長兼CEO ゲイリー・ブルーム(Gary Bloom)氏は「ベリタスはヘテロジニアス(異機種混在)環境でのユーティリティ・コンピューティングを考えている唯一のベンダだ」と述べ、IBMやヒューレット・パッカード(HP)などハードを持つベンダに対するベリタスの優位性を強調した。

 ベリタスは2003年のVERITAS VISIONで初めてユーティリティ戦略を発表。今年はどこまでその戦略が実現できたのかが注目された。ブルーム氏はこの1年について「すべての製品をメジャーアップグレードした」と説明し、ユーティリティ戦略実現へ順調に進んでいることを強調した。ベリタスが考えるユーティリティ戦略と、他社のユーティリティ戦略は基本的に同じ。既存のITリソースを活用し、必要なときに必要なだけのリソースを適切なコストで自動的に配分するという内容だ。

 ブルーム氏が強調したベリタスの強みとは、ヘテロジニアス環境でユーティリティ・コンピューティングを実現できること。ベリタスが大企業のIT部門マネージャ、810人に対して行った調査によると98%がマルチベンダによるシステム構築にコストメリットがあると回答しているという。実際、企業に導入されているシステムのほとんどは、現状でマルチベンダ環境になっている。ユーティリティ戦略を提唱する各社は、マルチベンダによる管理やインターフェイスの複雑性を隠ぺいし、1つのシステムとして仮想的に統合することに躍起になっているのだ。

 ブルーム氏はハードを取り扱うIBMやHP、強力なソフト製品を持つオラクルなどでは自社製品のサポートを優先することが前提となり、ヘテロジニアス環境のユーティリティ化が遅れると主張する。ベリタスの製品は顧客の環境に関係なく、ユーティティ・コンピューティングを実現でき、「究極の柔軟性と選択肢をユーザーの現場に提供できる」と訴えた。

 ベリタスが考えるユーティリティ・コンピューティング実現へのプロセスは、ユーザー企業による自社IT資産の洗い出し、リソースの統合、標準技術の採用、自動化、ITのサービス化という内容。特にブルーム氏は「ストレージの分野からユーティリティ化するのが一番手っ取り早い」という。ベリタスは5月4日、サービスレベルに応じてストレージを管理できる「CommandCentral」ファミリの新製品を発表した。新製品の「VERITAS CommandCentral Storage 4.0」は、同社のSAN管理ソフトウェア「SANPoint Control」と、ストレージリソース管理ソフトウェア「Storage Reporter」を統合した製品。オンラインとオフラインのストレージをシームレスに連携させ、1つのストレージ環境に統合する。ヘテロジニアス環境のストレージを仮想的に統合し、ユーティリティ・コンピューティングのインフラ基盤とする。

 もう1つの新製品「VERITAS CommandCentral Availability 4.0」は、ERPなどビジネス・アプリケーションのアベイラビリティを集中管理する製品。CommandCentralファミリによって集められたシステムの各種情報は、「CommandCentral Service」のシングルコンソールで確認でき、運用管理の効率性を高める。ベリタスは2004年1月に買収を発表した米Ejasentの製品「MicroMeasure」を年内にもCommandCentral Serviceに組み込んで出荷すると発表した。MicroMeasureは、データセンター内の物理的/論理的なリソースを対象に、利用量の計測、利用コストの割り出し、請求を実現するソフト。ユーザーや事業部門ごとにストレージ、サーバ、アプリケーションの使用量を明確にでき、SLAに基づく定量的なユーティリティ・コンピューティングを可能にするとしている。

 ベリタスはEjasentの別のソフト「UpScale」も2005年上半期にリリースする予定と発表した。UpScaleは、アプリケーション・バーチャリゼーションを行うソフト。アプリケーションの状態やシステムの接続に影響を与えることなく、アプリケーションのサーバ間移動を可能にする技術。「VERITAS Cluster Server」の拡張技術として組み込まれる見込みで、リソースの自在なプロビジョニングを実現するミドルウェアとして活用する。

 いまそこにあるユーティリティ・コンピューティング――「UTILITY.NOW.」をテーマに掲げたVERITAS VISION 2004だが、なるほどこれがユーティリティ・コンピューティングかと納得するような事例やテクノロジの説明は、期待していたほどにはなかったように思う。

同社 エグゼクティブ・バイスプレジデント マーク・ブレッグマン氏。ベリタス製品のロードマップについて基調講演を行った

 ブルーム氏やエグゼクティブ・バイスプレジデント マーク・ブレッグマン(Mark Bregman)氏の講演では、米国の放送局Skyの事例が紹介された。Skyは57のミッションクリティカルなアプリケーションを運用。従来はそのすべてに対して同一のディザスタリカバリのソリューションを用意していた。しかし、コストが増大。そのためこれまで同一のサービスレベルを求めていた各アプリケーションを、サービスとして再定義し5つのクラスに分割した。最も可用性が求められるサービスのクラスは、コストを投じて99.99%の可用性を実現。しかし、それほどミッションクリティカルではないサービスのクラスではコストを節約し、98%の可用性に調整した。ITをサービスとして定義することでコストを適切に配分し、トータルコストを減少させた。

 ブルーム氏はこの事例を「ユーティリティ・コンピューティングのケーススタディ」と紹介したが、ITのサービス化はユーティリティ・コンピューティングが目指す世界のある1つの要素でしかない。もちろんユーティリティ戦略実現への道筋がまだまだ続くことは、ブルーム氏も自覚している。ブルーム氏は「この1年を振り返ると、CommandCentralなど当社製品の統合化が進んできた。今後も製品のパッケージ化を進めたい」と述べ、製品のユーティリティ対応を進める考えを強調した。「ユーティリティ・コンピューティングは電気屋などで市販製品を買って実現できるものではない。ビルディングブロックという考えで時間をかけて少しずつコンポーネントを組み立てていかなくてはならない」と述べ、他社の買収も含めて製品を拡充する考えを示した。

(編集局 垣内郁栄)

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