[BEA eWORLD 2004開催]
BEA、プログラミング・モデルをオープンソース化する
2004/5/27
■BEAの新ビジョン「Liquid Computing」
米BEA Systemsの会長兼CEO アルフレッド・チュアング氏 |
米BEA Systemsの会長兼CEO アルフレッド・チュアング(Alfred S.Chuang)氏は、5月24日から開催しているプライベートイベント「BEA eWORLD 2004」の基調講演で、同社の方向性を示す新たなビジョン「Liquid Computing」を発表した。Liquid Computingという概念は、同社が従来提唱してきた“convergence”や“integration”という概念をさらに推し進め、企業の情報システムを巨大なエコシステムとして成立させるものである。BEA eWORLD 2004のテーマであるSOA(Service Oriented Architecture)は、「Liquid Computingを実現するための第1歩」(チュアング氏)であるという。
Liquid ComputingはBEAが提唱する情報システムの理想環境ともいえる。同社の製品戦略はLiquid Computingに沿って展開することになる。では、このLiquid Computingをもう少し具体性をもって解説するとどのようになるのだろうか。ここで3つのキーワードを挙げなければならない。すなわち、「enterprise compatibility」「active adaptability」「breakthrough productivity」である。
「IT投資の70〜90%は既存資産のメンテナンスコストである」とチュアング氏はいう。多種多様なプラットフォーム、さまざまなアプリケーションで構成される企業システムは従来(いまでもだが)、インテグレーションという名の下に構築されてきた。それはオープン・プラットフォーム時代の必然だったわけだが、システムをアップグレードする過程で、さまざまな不具合が生じてきたわけだ。
チュアング氏はこのような状況を「インテグレーション時代の終焉」と表現、アプリケーション間、あるいはシステム間のコンパチビリティ(互換性)がとれるようなシステムを構築することが必要だと話す。加えて、将来的なアップグレードを考慮に入れたアーキテクチャの構築を目指すことも重要だ(active adaptability)。さらに、システム稼働後の生産性をもシステム構築の際には視野に入れなければならない。「企業システムの寿命は平均10年といわれる。だが、10年後の未来を予測することはできない。システムが稼働している間に、変化に対応していかなくてはならないのだ」(チュアング氏)。
Liquid Computing実現に向けて、同社はいくつかの技術的なプロジェクトを走らせている。例えば、enterprise compatibilityの分野においては「Project QuickSilver」(コードネーム)がそれにあたる。マイクロソフトやIBM、SAP、オラクル、あるいはそのほかのレガシーシステムやプラットフォームをシームレスに統合し、互換性を保つための技術的な取り組みである。また、breakthrough productivityの分野においては、将来的にすべてのコンピューティング環境はモバイルになるとするコンセプト「ALCHEMY」を策定している。
■WebLogic Workshopのアプリケーション・フレームワークをオープンソース化
BEA eWORLD 2004では、BEA WebLogic Workshopのアプリケーション・フレームワークをオープンソース化した「Project Beehive」も発表した。BEAのプロダクト・マネジメント・ディレクター デイヴ・コッター(Dave Cotter)氏は「自動車でいえば、エンジン部分を業界で共通化しようという試み」だと説明する。Project BeehiveはThe Apache Software Foundationにも承認されている。すでに50社を超えるコンポーネント、ツールおよびプラットフォームの大手ベンダがBeehiveを支える初期エコシステムの一翼を担うことを表明しているという。
BEAのプロダクト・マネジメント・ディレクター デイヴ・コッター氏 |
Project Beehiveには、BEA WebLogic Workshopの技術をベースとしたJavaアノテーション、Javaコントロール、Java Webサービス、JPF(Java Page Flow)などが含まれている。Project Beehiveは開発環境そのものではない。オープンソース化したアプリケーション・フレームワーク、つまりランタイム環境であり、EclipseのようなオープンソースのIDE(統合開発環境)や商用IDEを補完することができる。そのため、Webアプリケーションのデザイン部分でEclipseを活用し、アプリケーション・フレームワークの部分でBeehiveを活用するという組み合わせが可能となる。
同社が開発タスクの抽象化部分であるアプリケーション・フレームワークをオープンソース化したのには、いくつかの背景がある。1つは、Javaの標準化のプロセスの遅延化、2つ目はJavaというプログラム言語そのもののレイヤを超えたトレンドの存在、つまり、より上位層に開発の焦点が移行し始めたこと、第3にはanytime/anywhereというJavaが当初約束していたプラットフォーム間の透過性が実際にはうまく機能していないこと、などが挙げられる。そういう意味でBEAがいち早く自社の開発環境のプログラミング・モデルをオープンソース化し、Javaコミュニティに開放したことは画期的といえる。問題は、これがEclipseのような“一般性”を獲得できるかどうかにかかっている。
(編集局 谷古宇浩司)
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