アディ・シャミアの秘密分散法、世界初の応用ソフト

2004/6/25

(左から)トラステッドソリューションズ 代表取締役会長 傳田信行氏、代表取締役社長 杉原英文氏

 トラステッドソリューションズは6月24日、電子情報を任意に分割・統合する数学的理論「秘密分散法」を応用したセキュリティソフトウェア製品「SplitSafe」とSplitSafeの追加機能群「Trusted Communityware」シリーズを発表した。暗号方式の1つである秘密分散法を応用、実装したソフトウェア製品は同社によると世界初のことだという。沖電気工業、日立ケーイーシステムズ、CIJといったパートナー企業のシステム・インテグレーション経由で販売する。初年度2億円の売り上げを目指す。

 同社が展開するビジネスの核は、秘密分散法という暗号化技術にある。RSA Securityの創業者の1人で、イスラエル ワルツマン研究所の教授であるアディ・シャミア氏が1979年に発表した論文が基礎となっている。
 
 現在主流である公開鍵暗号方式は、例えば、データAを暗号化する場合、データBと暗号鍵を生成し、両者を組み合わせて復号化するという仕組みを採用している。これに対し、秘密分散法はデータAをN個の無価値なデータに分割、分散することで、情報の盗難や改ざんリスクを低減させる仕組みである。暗号化した情報の管理という側面からみれば優れた方式だったが、1つの情報を分割・分散して管理するという特徴から、「発表当時のコンピューティング環境(メモリやハードディスクの問題)では負荷が大きく、現在ほどネットワーク環境が整備されていなかったこともあり、具体的な製品として日の目を見ることがなかった」と同社 代表取締役社長 杉原英文氏はいう。

 トラステッドソリューションズは、この秘密分散法を基盤に「認証」「共有」「監視・対応」「保管」「転送」などのセキュリティ関連モジュールを付加し、各社のセキュリティ・ポリシーとともに運用する総合的なセキュリティサービスを考案、この方式を「分散情報管理」(Policy based Information Management on Secret Sharing)と名づけ、普及を図る。

 杉原氏が製品の販売を加速させるロジックはなかなかユニークだ。すなわち……、
 
 今後企業は個人化、小組織化が加速し、高速回線を通じた他企業との“ネットワーク協業モデル”が一般化する。その際、自社内の重要機密情報を守るのは当然のことだが、他社と柔軟な協業体制を構築するにあたって、情報の活発な流通は当たり前となる。その際、現在の“守り一辺倒のセキュリティ対策は、まったく役に立たない。秘密情報を共有しながら保護可能という、攻めの経営戦略の武器としてセキュリティ対策を考える場合、必要となってくるのが、「分散情報管理」ソリューションである。

 このことを証明するためにも同社は「まず自身で自社製品を活用し、ユビキタス時代のネットワーク型協業を展開する」と杉原氏はいう。

 なお、同社の会長には元インテル会長の傳田信行氏が就任、杉原英文氏も元インテルの社員である。同社はもともとは傳田氏が経営するコンサルティング企業「傳田アソシエイツ」の1部門だったが、本格的な事業展開の必要から独立法人となった。

(編集局 谷古宇浩司)

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