サンの最新Java戦略を読み解く

2004/7/7

 米カリフォルニア州サンフランシスコで6月28日〜7月1日(現地時間)の4日間にわたって開かれた「JavaOne 2004」では、多数のニュースリリースとともに、さまざまな新しいキーワードや概念が登場した。ここでは、それらニュースを読み解くために必要な周辺事情を、米サンマイクロシステムズ幹部へのインタビューを交えまとめていこう。

■サンのオープンソースに対するスタンス

 今回、Java技術の一部がオープンソース化されるという話題が業界を駆け巡った。実際には、リッチ・クライアント・インターフェイスを実現するProject Looking Glassなど、J2SE向けの4つのコンポーネントが新たに公開されたのみである。Javaのコアとなるコンポーネントではないため、オープンソース推進者の間からは不満の声が挙がっている。だが米サンマイクロシステムズでは、Javaが標準化される際の公開プロセスであるJCP(Java Community Process)こそがオープンソースであると主張している。JCPの管理者はサンであるが、実際に標準化プロセスをコントロールできているわけではないため、この主張はある意味で正しいといえる(逆説的ないい方だが)。

 サンの「“Javaのオープンソース化”を求める動き」への回答はJCPなのだが、前出の4つのJ2SE向けコンポーネントは、それぞれGPL(General Public License)、LGPL(Lesser GPL)、JRL(Java Research License)とJCPとは異なるライセンス体系を与えられている。このGPLが、一般にオープンソース・コミュニティがいうオープンソースのことである。

米サンマイクロシステムズCMO(Chief Marketing Officer)のアニル・ガドール氏

 GPLを採用した場合、商用製品であってもGPLの規約の下でソースを完全に公開する必要がある。Linuxが採用しているのはGPLだ。LGPLはGPLの規約をやや緩めたもので、主にアプリケーション・コンポーネントに採用されている。もしこれらコンポーネントをGPLで公開した場合、親となるアプリケーションなどにもGPLが適用される。そこでLGPLを用いることで、GPLの適用範囲を必要最小限度にとどめるのである。JRLは研究機関向けのライセンスで、学術研究利用に限り利用が自由になるというものだ。

 今回、Looking GlassにGPLを採用した経緯について、同社CMO(Chief Marketing Officer)のアニル・ガドール(Anil Gadre)氏は、「ブレイクスルーとなる可能性を秘めた製品だったから」とその理由を語る。「GPLを採用することで、一般的には市場への浸透速度が加速する。Looking GlassへのGPL適用は、その期待の大きさを反映したものだ」と同氏は述べる。つまり、デスクトップ・コンポーネントにGPLを適用することで、Java Destop System(JDS)などを広く浸透させるのが狙いというわけだ。

 また、現在研究用途向けにはオープン化されているSolarisだが、商用への開放の可能性は、ガドール氏によれば「検討中」だという。Solarisをオープンソース化することで、サンにどのようなメリットがあるのか。同氏は、「defensive(保守的)」と「opportunity(チャンス)」という二面性を理由に挙げている。その最大の狙いは、ずばりLinuxの攻勢からサンを守るためである。Solarisのオープンソース化でLinuxの進軍をくい止め、Solarisを広く利用してもらうのである。また将来的には、UNIXのみが備える機能をLinuxが取り込むなどして、さらにオープンソース・コミュニティが拡大することで、Windowsなどの勢力と有利に渡り合うことも考えられるという。

■サン版SOA「Project Kitty Hawk」

 最近、IT業界で話題になっているエンタープライズ・コンピューティング向けのキーワードにSOA(Service Oriented Architecture)がある。現状、企業システムでは各プロセスが強固に連携し、後の仕様追加や変更があまり容易ではないケースが多いと考えられる。SOAのアイデアでは、これらシステム内の各プロセスの結びつきを緩くし、それぞれをサービスの1つとみなすことで、システム全体の柔軟性や可用性をアップさせようというのが狙いだ。システム構成的には、SOAのベースとなるインフラが存在し、そこに各プロセスがWebサービスなどの技術を用いて接続されている状態になる。各プロセスは、SOAのバックボーンを介して互いに通信可能である。

 このアイデアをJavaで展開しようというのが、サン版SOAの「Kitty Hawk」だ。同社によれば、Kitty Hawkは1つの製品ではなく、SOAを構成する製品群全体をカバーするアーキテクチャのことを指すという。米サンの副社長兼Java Webサービス/ツール・マーケティングを担当するジョー・ケラー(Joe Keller)氏によれば、「2005年第1四半期より18カ月間にわたり、90日おきにKitty Hawkを構成する製品群をリリースしていく」と説明する。

 Kitty Hawkのコアとなる製品は、サーバ・アプリケーション・スイートのJava Enterprise System(JES)と開発ツールのJava Studio Enterprise、NetBeansなどである。Kitty Hawk内部での通信はWebサービス・ベースとなり、SOAの骨子であるビジネス・プロセス記述言語のBPEL(Business Process Execution Language)への対応も行われるという。前出のガドール氏によれば「究極的には、Kitty Hawkのような環境でWindowsからLinuxまであらゆるプラットフォームを包含させることも可能になる」と説明する。

(鈴木淳也 Junya Suzuki)

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サン・マイクロシステムズ

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