ディザスタ・リカバリを強化したDB2新バージョン発表

2004/9/11

 日本IBMは9月10日、同社の基幹システム向けデータベースの新バージョン「DB2 UDB V8.2」(コードネーム:Stinger)を発表した。出荷開始はダウンロード版が9月17日、メディア版は10月29日となる。同日に開催された同社主催セミナー「DB2 Day 2004」では、Stingerの開発責任者レス・キング(Les King)氏を基調講演に招いたほか、最新のDB2を紹介するセッションが設けられ、多くのユーザーでにぎわっていた。

日本IBM ソフトウェア事業部 DB2インフォメーション・マネジメント事業部 事業部長 中川いち朗氏

 2年ぶりのバージョンアップとなったV8.2の機能強化は200個所以上に及ぶというが、会見に立った同社 ソフトウェア事業部 DB2インフォメーション・マネジメント事業部 事業部長 中川いち朗氏は、「64ビットLinux(カーネル2.6)対応」「ディザスタ・リカバリ」「オートノミックの拡張」「開発環境の向上」の4点にスポットを当てた。

 64ビットLinux対応では、旧バージョンでもIA/AMDサーバの64ビットには対応していたが、V8.2ではこれに加え、EM64T、eServer pSeries、iSeries、zSeriesまで対応ハードウェアを拡張した。「昨年くらいからLinuxサーバのクラスタリング構成を採用するユーザーが急速に立ち上がってきた。そこで新しい動きが出てきた。いったんクラスタリング構成でスケールアウトさせたものの、Linuxサーバが数百台にもふくれあがって、管理しきれないという声だ」と中川氏は指摘した。「メインフレームのzSeriesなどで64ビットLinuxを稼働させるという、スケールアップを望むユーザーに対応した点が、V8.2の大きな特徴だ」。

 最近注目が集まっているディザスタ・リカバリについては、同社のInfomixに搭載されてる「HADR」(High Availability Disaster Recovery:高可用性災害時リカバリ)を移植した。1次DBサーバからスタンバイDBサーバへ切り替える時間を大幅に短縮したという。また、東京〜大阪間などのリモート間でもローカル環境と同様のスピードでフェイルオーバーできる。

 開発者へのサポート強化として紹介されたのは、オートノミック機能の強化と開発環境の向上だ。前バージョンで初めて導入されたオートノミック機能とは、GUI管理ツールが最適なチューニングやパラメタ設定を教えてくれるというもの。V8.2では「自動バックアップ」「設計アドバイザーによるチューニング」といった機能追加が施された。開発環境では、.NET環境でのCLR(Common Language Runtime)への対応、Java環境でのEclipse&Rational XDEとの連携強化、VB.NETのアドイン機能などが挙げられる。

 販売戦略について中川氏は「マイグレーションの推進」「低価格戦略による中小規模ユーザーの獲得」「ISV/開発会社の支援促進」「技術者の育成」の4点を挙げた。「DB2の既存ユーザーはディザスタ・リカバリ機能への関心が強く、新規ユーザーは開発コストを削減できるオートノミック機能を評価してくれる」と語った。

 ライバルとなるOracle 10gはGrid、Microsoft SQL Server 2005はビジネス・インテリジェンス機能と、それぞれセールスポイントを明確に打ち出しているのに比べると、Stingerは全体として地味な機能強化という印象だ。「DB2 Day 2004」のプログラムに「Stinger Night」と題したテクニカル・コミュニティ懇親会が用意されている。「これをユーザーコミュニティ立ち上げの第1歩とする」(中川氏)という仕掛けになっているそうだが、どこまでDB2技術者の輪を広げられるか注目していきたい。

(編集局 上島康夫)

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