Oracle 10gが1月末に国内出荷、中小システムへの浸透図る

2003/10/7

　日本オラクルは次世代データベース「Oracle Database 10g」と、アプリケーションサーバ「Oracle Application Server 10g」、管理ツール「Oracle Enterprise Manager 10g」の3製品（以下、Oracle 10g）を2004年1月29日に出荷すると正式発表した。日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏は、「ミドルウェアでコンピューティング環境を変えるというオラクルの考えを示した製品」と述べ、「他社製品を圧倒的に凌駕する」と強調した。

日本オラクル代表取締役社長新宅正明氏

　Oracle 10gは米オラクルがサンフランシスコで9月に開催した「OracleWorld 2003」で発表された。今回の国内発表では機能面での新しい発表はなく、日本オラクルは国内の販売戦略を中心に発表した。

　オラクルが示した販売戦略のポイントは、「メインフレームからの移行」と「既存顧客のOracle 10g化」、「小規模システムへの展開」だ。具体的な施策としては、サン・マイクロシステムズやNECなど8社がOracle 10gの技術検証施設を開設する予定。すでに新日鉄ソリューションズがオラクルと共同で「NSSOL Oracle 10gソリューションセンター」を開設している。

　オラクルは、国内31社を対象にOracle 10gを早期導入するベータ・プログラムを展開している。パートナー限定で製品出荷前にOracle 10gを検証することができる「アーリー・アクセス・プログラム」も始めていて、オラクルとしては早期にOracle 10gの導入企業を増やし、スタートに勢いを付けたいところだ。2日間でOracle 10gのデータベース管理を学ぶことができる「Oracle 10g Top Gun」などのセミナーも全国で開催する予定となっている。

　競合製品からの移行ツールも用意する。「Oracle Migration Workbench」は「Microsoft SQL Server」や「IBM DB2」、サイベース製品、MySQLなどからOracle 10gへの移行を支援するツール。Oracle Database 10gに同梱して提供する。SQL ServerやDB2とOracle 10gを共存させる「Oracle Transparent Gateway」も2004年4月までに出荷する予定。ライセンス価格は187万5000円からとなっている。また、オラクルは、Oracle 10gで新たにx86ベースの「Sun Solaris Operating Environment」と「Apple Mac OS X」に対応した。

　Oracle 10gの導入は、当初は既存顧客が中心になりそうだ。オラクルが狙っているのは、2世代前のOracle8iを使っている中小規模企業。日本オラクルの取締役専務執行役員山元賢治氏が「オラクルが若干、追求が弱いとされていた」と指摘した中小規模のシステムをターゲットに、Oracle 10gではCD-ROM1枚、20分でのインストールや自動設定、容易な開発環境などを用意した。

　オラクルにとってはWindows環境への浸透も課題。グリッド・コンピューティングの実現を提唱するOracle 10gは、ともすれば大企業の大規模システムが対象の製品と思われ、Windows環境が多い中小規模企業へのアプローチが弱まる可能性がある。新宅氏はOracle 10gについて、「Windowsにファミリアなエンジニアに、.NET環境下でもOracleが優れていると確信される製品になった」と述べて、Windows環境への最適化を強調した。Windows版Oracle 10gの出荷は2月以降になるが、新宅氏は「Windowsに特化したチューニングを行い、マイクロソフトとオラクルのソリューションを世に問いたい」と自信を見せた。

　オラクルは12月に東京で開催するOracle WorldまでにOracle 10gの価格やパッケージ内容を発表する予定。Oracle 10gはCPU数などリソースをダイナミックに変化させるグリッド・コンピューティングを実現する製品だけに、従来のCPUライセンスとは異なる新たなライセンス体系を導入すると見られる。

（垣内郁栄）

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