ILMめぐりさや当て、EMC副社長「日立とはアプローチが違う」
2004/9/15
情報管理の新しい考え方として、情報の価値に応じて適切なストレージにデータを格納する「インフォメーション・ライフサイクル・マネジメント」(ILM)を提唱するベンダが増えている。しかし、米EMCのマーケティング&テクノロジー担当主席副社長 ハワード D. エリアス(Howard D. Elias)氏は「世界中でILMへのアプローチが聞かれるが、あえていわせてもらえばILMのコンセプトを打ち出しのはEMC。他社はILMが顧客にメリットがあると判断し、アピールしている」と述べ、自社のILM戦略に自信をみせた。
米EMC マーケティング&テクノロジー担当主席副社長 ハワード D. エリアス氏 |
エリアス氏は、日立製作所が9月8日に発表したハイエンドストレージプラットフォーム「SANRISE Universal Storage Platform」(USP)について、「日立はあらゆるストレージを仮想化できるといっているが、まずは高価なUSPとソフトを用意し、その後ろに各社のストレージを接続するアプローチになっている」と指摘した。「EMCから見ると、日立のアプローチでは(USPが必要となるため)インフラのコストが増大し、独自性と複雑性が生まれる懸念がある」という。
一方、EMCのアプローチは「ストレージのプラットフォームは何でもいい」という考えで、「(ILMを実現するための)コントロールはすべてソフトで行う。他社のILM戦略と比べてEMCはよりオープンで柔軟、コスト効果も高い」と説明した。「EMCと日立とはILMへのアプローチが違う」。
EMCはILMを5つの要素で考えている。ILMのベースになるのはさまざまな用途によって使い分けができる「階層型ストレージ」。データに求めるサービスレベルと投下するコストによって選択する。その上にくるのが「保護とリカバリ」の要素で、データとアプリケーションの関係を考えて、どのような保護、リカバリのツールを使うかを選択する。次に重要になるのが「データの移動」に関する要素。「シンプルでコスト効果がある方法でデータを移動させるのが重要になる」とエリアス氏は説明する。そしてILMの中核となるのが「情報とコンテンツの管理」。時間とともに変化する情報やコンテンツの価値を判断し、データをどのタイミングで別のストレージに移動させるかをポリシーベースで管理する。「情報インフラストラクチャ管理」の要素では、ストレージ環境の全体を監視する。
EMCではこの5つの要素にそれぞれソフトを割り当てて、ILMを実現するとしている。2003年後半には主に「保存とリカバリ」に当たる製品を持っていたレガートと、「情報とコンテンツの管理」の製品を持っていたドキュメンタムを買収し、自社のソフト部門に統合した。これらの買収によって「インテリジェンスなコンテンツ管理を完成させた」という。
エリアス氏はEMCを含めて業界全体が取り組むべきILMの課題についても説明した。それはILMを企業のビジネスプロセスとより合致させていくこと。エリアス氏は「企業のアプリケーションやビジネスプロセスを理解し、情報管理と結びつけていくことが今後の業界全体の課題」と述べた。
EMCは企業がILMを実現するうえで3つのステップで設定している。最初のステップはベースとなる階層型ストレージの導入、次のステップは特定のアプリケーションへのILMの導入、そして最後のステップが企業のすべてのアプリケーションを対象とするILMの導入だ。エリアス氏は「EMCの半分の顧客は最初のステップにいる」としたうえで「ステップ2の特定アプリケーションへのILM導入に進んでいるのは金融やヘルスケア、政府。ERPや電子メール管理、ヘルスケアのカルテ管理などのアプリケーションでILMの利用が広がっている」と説明した。
(編集局 垣内郁栄)
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