日立、HPの新ストレージは仮想化を目指す異母兄弟
2004/9/9
日立製作所はディスクアレイ自体に仮想化機能を持たせたハイエンドストレージ「SANRISE Universal Storage Platform」(USP)を9月8日に発表した。別の日立製ストレージをファイバチャネルで接続し、仮想ボリュームとして利用できるのが最大の特徴。他社製ストレージを接続し、データをUSPに移行することもできる。日立ではストレージ統合によるTCOの削減と、ストレージでの「データライフサイクル管理」(DLCM)ができるとアピールしている。
日立製作所 執行役専務 情報・通信グループ長&CEO 古川一夫氏 |
ストレージの仮想化を行う場合、ソフトウェア上やSANスイッチを用いて行う方法がこれまで多かった。しかし、日立の執行役専務 情報・通信グループ長&CEO 古川一夫氏は「日立は、サーバやネットワークに負荷をかけないよう、ストレージで仮想化をやるべきと考えた」として、ストレージ自身での仮想化にこだわりを見せた。「ストレージ仮想化のパラダイムを完全に変える」というのがUSPの売り文句。古川氏はUSPの投入で「EMCとの一騎打ちになる」と強調した。
USPのストレージ仮想化技術は「Universal Volume Manager」の名称。日立のオンラインストレージ「SANRISE 9900V」「同 9500V」と、アーカイブ用途のニアラインストレージ「同 9500V」(SATA HDD)をファイバチャネルで接続し、USPと統合できる。USPに接続したサーバからは、USPの論理ボリュームとして外部ストレージを透過的に見ることができる。外部ストレージに対して、USPのコピー機能などを利用可能。接続できる外部ストレージの容量は最大32ペタバイトとなっている。内部ストレージの最大容量は165テラバイトで、2005年第1四半期には332テラバイトまで拡張する。
また、Universal Volume Managerには日立の旧機種や他社のストレージのデータをオンラインのままでUSPに移行する機能もある。仮想ボリュームとして扱うことはできないが、わざわざサーバにデータを一度移したり、SAN経由でアプリケーションを利用して移行する手間がない。データ移行に対応するのは、日立の「SANRISE 2000シリーズ」「同 1000シリーズ」と、IBMの「エンタープライズ・ストレージ・サーバー(ESS) 800」、EMCの「Symmetrix 8000シリーズ」「DMXシリーズ」。日立製作所のRAIDシステム事業部 事業部長 小菅稔氏は「技術的にはファイバチャネルを使ったストレージならサポートできる。しかし、他社製品のサポートなど難しい面もある」と説明。一方で、今後は「サポートするストレージはできるだけ拡充したい」と述べた。
日立製作所が発表したハイエンドストレージ「SANRISE Universal Storage Platform」 |
USPはストレージ・リソースを仮想的に分割し、特定のアプリケーションにディスク、キャッシュ、ホスト接続用ポートを優先的に割り当てる新機能「Virtual Partition Managaer」も搭載。仮想的にストレージを分割することで、アプリケーション同士の干渉がなくなり、QoSが保てるとしている。日立はディスクドライブ上で作成したジャーナル(変更履歴)ファイルをネットワーク経由で別のUSPに転送する新方式のリモートコピー機能「Universal Replicater」も2005年第1四半期に追加する予定。データ転送レートが変動しても安定的にデータのコピーが可能で、安価なIPネットワークを使ってディザスタ・リカバリのシステムが構築できるという。
USPの統合管理は日立の「JP1/HiCommand Version 3.5」で行う。仮想ボリュームも含めてストレージの統合管理が可能で、ストレージ・リソースへの割り当ての作業を簡素化するという。日立では2005年から2006年にかけてUSPでポリシーベースのデータ配置やアーカイビングを実現するとしている。
USPの最小構成価格は1億1638万5150円からで、9月末に出荷する。仮想化技術やパーティショニングの技術を利用するにはオプション料金が必要。日立ではストレージ事業全体の規模を2004年度の2900億円(見通し)から2005年度に3200億円まで拡大することを目指している。その3200億円のうち、70%程度をUSP関連の事業で見込んでいる。
HPが日立のOEM製品を発表、独自機能で違いを演出
日本ヒューレット・パッカードはストレージの情報ライフサイクルマネジメント(ILM)を実現するうえで中核となるハイエンドストレージ「HP StorageWorks XP12000 ディスクアレイ」を9月中旬に出荷すると9月8日に発表した。XP12000は日立からOEM提供を受けた製品で基本的な機能はUSPと共通だが、HPでは「追加の独自機能を盛り込んである」としている。
日本HPのエンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ネットワークストレージ製品本部 本部長 渡辺浩二氏 |
日本HPのエンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ネットワークストレージ製品本部 本部長 渡辺浩二氏はHPが考えるILMについて「データの生成から消滅までの時間と、データの重要度の2つの軸でストレージを管理する」と説明し、「HPが考えるILMはビジネスプロセスを含めたITシステム全体に対するデータ管理手法」と指摘した。単にデータを管理するだけでなく、データを解析することでビジネスプロセスの効率化につなげるのが他社にない特徴だとして、「コンサルティングやデータ解析のツールもすでに用意している」と述べた。
HPでは新製品のXP12000をILMの中核と位置付ける。XP12000が中心となってほかのストレージを統合し、リソースを仮想化する。XP12000にはHPの小規模向けストレージ「MSA 1000」やハイエンドの「XPシリーズ」を外部拡張ストレージとして直接取り込むオプション機能「External Storage XP」があり、XP12000の背後にMSAファミリを接続し、仮想ボリュームとして利用できる。XP12000は仮想ボリュームを含めて14ペタバイト(2005年第1四半期に32ペタバイトまで拡張予定)までをサポートする。また、XP12000はIBM ESSシリーズ、EMC Symmetrixシリーズのストレージを接続してデータをXP12000側に移行する機能も2005年第1四半期に追加する。
日本HPが発表した「HP StorageWorks XP12000 ディスクアレイ」 |
これまでほかのストレージからデータを移行したり、共有する際にはSANを構築することが多かったが、「SANではデータ移行のためにアプリケーションを設計する必要があり、コストと時間が必要」(同社 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ネットワークストレージ製品本部 プロダクトマーケティング部 担当マネージャ 諏訪英一郎氏)となっていた。XP12000でデータを直接に移行したり、統合できるようにしたことで、このコストと時間を削減できるという。
ILMでは、データの重要度や生成時間によって、データを各ストレージ間で移動させるツールがポイントとなる。XP12000はあらかじめ設定したポリシーに応じて自動でデータを移行させる新ツール「Auto LUN XP」を用意する。アクセス頻度が高いなどビジネスにとって優先度が高いデータを認識し、高信頼なボリュームに移行する。逆にアクセス頻度が低いデータは大容量で低コストなストレージのボリュームに移行する。XP12000は外部拡張ストレージにデータ複製を高速で作る機能「Business Copy XP」も備える。
XP12000はビジネスの成長によってディスクを追加可能。最小構成時は576GB(raw)、288GB(usable)で、価格は1億3053万6000円となっている。
また、サン・マイクロシステムズも日立のUSPをベースにした新ストレージ「Sun StorEdge 9900」を9月8日に発表した。
(編集局 垣内郁栄)
[関連リンク]
日立製作所の発表資料
日本ヒューレット・パッカードの発表資料
サン・マイクロシステムズの発表資料
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