生体認証を導入、東京三菱の多機能ICカード
2004/9/28
手のひら静脈認証 |
東京三菱銀行は9月27日、キャッシュカードにクレジットカードと電子マネー機能を加えた多機能ICカード「スーパーIC カード 『東京三菱-VISA』」の取り扱いを10月12日に開始すると発表した。同カード最大の特徴は最新のIC技術を活用した身体認証の導入にある。ICチップの仕様はユーザー領域32KBで、現在実用段階にあるものとしては最大。使用可能領域32KBに搭載するアプリケーションのうち、全銀協ICキャッシュカードや静脈認証、クレジットカードといったソフトウェアはGPエリア(24KB)に、残りの8KB領域にはFeliCaエリアとして、電子マネー「Edy」が搭載されている。将来的な多機能化を見込んで、接触側にJava CardとVisa Global Platform、非接触側にFeliCa OSなどの多機能OSを搭載している。このデュアルインターフェイスにより、接触・非接触のクロスメモリアクセスが可能で、端末ごとのスペックの制約を回避することもできる。
「スーパーIC カード 『東京三菱-VISA』」に搭載された本人確認のためのセキュリティ機能は手のひらの静脈を利用する。バイオメトリクス認証を(ATM取引を含めた)金融分野で本格運用するのは東京三菱銀行が初めて。同行は実際にバイオメトリクス認証が銀行取引で実用化されている韓国などの事例研究を行い、認証の具体的な手法を「手のひら静脈認証」と「指紋認証」に絞った。今回、手のひら静脈認証を採用したのは、約1000人の顧客に対するアンケートと、都内8カ店でのデモ機による体験実地調査を経てのものである。身体認証データはICチップ内に保管され、東京三菱銀行はデータを保有しない。同行によると、現在の技術では、ICチップ内の身体認証データを読み取り、偽造・変造することは極めて困難であるという。
今回、東京三菱銀行がICチップによるキャッシュカードのセキュリティ強化に踏み切った背景の1つには、磁気ストライプ(MS)カード以上に強固なセキュリティ性能が求められているという点にある。MSカードは預金口座情報を磁気ストライプに記録している。カードのデータがスキミングされ、暗証番号の推測・探知が実現した場合、重要情報は第3者に盗み出されてしまう。実際、カードの偽造・盗難事件が発生している。東京三菱銀行では、クレジットカード機能や電子マネー機能以外にもさまざまなサービス機能をICチップに搭載することで、個人向け金融事業の業務拡大を狙っている。そのためにも、新たなセキュリティ技術を同カードに搭載する必要があった。
なお、東京三菱銀行は、非接触IC(FeliCa)を携帯電話に組み込み、カード化して使用するというサービスの展開も計画している。商用パイロットサービスは2004年11月も大手町、丸の内、有楽町で展開予定で、2005年秋ごろに本格サービスの開始を計画している。
(編集局 谷古宇浩司)
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