いま持つITシステムでユーティリティ化の実現を、ベリタス

2004/10/7

米ベリタス 会長兼社長兼CEO ゲイリー・ブルーム氏

 ベリタスソフトウェアは10月6日、日本で4回目となるプライベートイベント「VERITAS VISION 2004 JAPAN」を都内で開催した。

 イベントの基調講演、その後の記者会見で米ベリタス 会長兼社長兼CEO ゲイリー・ブルーム(Gary Bloom)氏が強調したのは、「ユーティリティ・コンピューティングはいますぐ実現できる」ということ。ハードベンダ各社が自社製品、しかも新しい製品からITシステムのユーティリティ化を段階的に推し進めていく中で、ベリタスはハードベンダから独立したソフトウェア専業会社であり、ヘテロジニアス環境での優位性を猛烈にアピールした。「ユーザーが求めているのは、新しいハードウェアを購入し、それでユーティリティ化することではない。いまあるITシステムのユーティリティ化なのだ」(ブルーム氏)。

 これに対して、オープン環境でも1社のハード、ソフトにそろえれば問題はないではないか、という疑問がわく。ブルーム氏はそれに対して、実際にあった事例を挙げた。「ある金融機関はストレージをすべてEMCでそろえ、それで大丈夫だと考えていた。数カ月後、ある金融機関を買収した。その会社はすべて日立(製作所)でストレージをそろえていた」。つまり、単一環境を想定し、それに基づいた戦略をユーザー企業が取っていたとしても、経営がそれを許さない(計画外のことが生じる)というのだ。ひと昔前ならば、こうした発言は、日本の実情を知らない米国の経営幹部が、米国の事例を日本に押し付けているだけだという批判ができただろう。が、現在ではリアルな話として聴衆にも伝わる。

 しかし、イベントで語られる多くの話は、ベリタスが今年5月に米国ラスベガスで開催した「VERITAS VISION 2004」と同じ(あるいは近い)メッセージだと考えればよい(@ITニュースの「この1年でどこまで進化? ベリタスのユーティリティ戦略」。それ以外で大きなトピックとしては、電子メールのアーカイブソフトでは大手のKVSを買収したこと(ただし、買収の発表は8月31日付)ぐらいだろうか。

 だが、目を日本に転じると、事情は多少異なる。VERITAS VISION 2004 JAPANに合わせて発表されたこととして、(1)ITシステムのユーティリティ化を実現する施策、(2)富士通とのミッションクリティカルなLinuxシステム実現に向けた協業、(3)日本ネットワーク・アプライアンスとのマーケティング、販売、サポート面における協業、(4)日本テレコムネットワークサービスとのディザスタリカバリ(DR)サービスでの協業、(5)VERITAS ジャパン エンジニアリング センターの2005年の開設、といった点だ。

 ここでは、富士通との提携、そしてVEITAS ジャパン エンジニアリング センターについて見てみよう。

 富士通との協業の主な内容は、富士通が発売を予定しているメインフレームと同等の性能と信頼性を実現する大規模基幹IAサーバでのストレージソフトウェア製品の共同開発だ。ベリタスの持つバックアップ、ファイルシステム、ボリューム管理技術といった機能と、富士通の持つストレージやサーバ、ミドルウェアと連携した機能などを組み込んだソリューションを共同で開発するという。ブルーム氏もこの提携には「期待している」と述べた。これは、富士通と組むことでエンタープライズLinuxにおいて、より優位な立場を築こうという戦略だ。

 VEITAS ジャパン エンジニアリング センターは、ベリタスの世界戦略の一環で、製品開発を米国以外の拠点、特にユーザーと近い場所でも行う、というものだ。その狙いは、ユーザーの声を素早く製品に取り入れ、各国に適した製品開発に結びつける、ということにある。

 これまで、日本のシステム環境の動作検証も米国などで行うことが多かったが、2005年のセンター開設後は、日本で動作検証などを行えるようになり、ユーザーへのサービス拡充を目指す。また、日本語による詳細な技術文書なども提供していく。

ベリタスソフトウェア 代表取締役 木村裕之氏

 さらに日本法人では、7月15日に「VERITAS DR コンサルティングサービス」を開始した。まずコンサルティングはDRから行うが、ユーティリティ・コンピューティング、さらに「米国などですでに行っているアプリケーションのパフォーマンスに関するコンサルティングも、今後検討したい」(ベリタスソフトウェア 代表取締役 木村裕之氏)という。

 米国では当たり前の言葉となったユーティリティ・コンピューティングだが、まだ「日本ではなじみのない」状況だ。だが、「ようやく議論できる土壌ができた」と木村氏は語る。「今回のイベントにも、CIOなどの来場も増えた」とする。

 ストレージをコアにユーティリティ・コンピューティングを推進し、それによるコスト削減を目指すベリタス。ブルーム氏は、「ユーザー企業のIT投資は年々減り続けている。その中で運用管理コストの割合が多くなり、新しい投資は減っている。これではビジネスを維持するだけ」と述べたうえで、ユーティリティ・コンピューティングを進めれば、「運用管理コストを削減させ、新規に投資ができる」という。

 さまざまなユーティリティ化の提案がITベンダから出される中、ベリタスが抜け出ることはできるだろうか。

(編集局 大内隆良)

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