サンのプロセッサ戦略とスーパーコンピュータ

2004/10/15

米サン・マイクロシステムズ 上級副社長のデビッド・イェン氏

 米サン・マイクロシステムズでプロセッサグループを指揮する上級副社長のデビッド・イェン(David W. Yen)氏が来日した。イェン氏は現在、同社が推進するコンピューティング環境のビジョン「スループット・コンピューティング」の提唱者でもある。2003年11月の正式発表から現在まで一貫して「スループット・コンピューティング」を唱えるイェン氏がこのビジョンに託すのは、次世代スーパーコンピュータの真の在り方だ。「次世代のスーパーコンピュータは、現在のコモディティ・プロセッサをつなぎ合わせたような形では決してない。基盤となる半導体技術の革新があって初めて、真にスーパーコンピュータと呼ばれる環境となる」とし、“Basic Engineering”の重要性を示した。

 「サン・マイクロシステムズはシステムを提供する企業である。まずこれを強調しておきたい」。イェン氏は、プロセッサのロードマップについて解説する前にこう宣言した。プロセッサ開発において競合といえるインテルとの差別化点を浮き彫りにするためにも、同社としては、プロセッサ単体の技術的な優位性だけを競うわけにはいかない。サーバOS「Solaris」と協調し、システムとしてのパフォーマンスの向上が見込めるという前提があって初めて、イェン氏が指揮するプロセッサ開発の意義がある。

 サンのプロセッサ戦略は大きく分けて2つの流れがある。1つはx86アーキテクチャ(AMDのOpteron)に代表されるコモディティ・プロセッサの流れである。Athlonの設計を基礎に、アプリケーション互換を維持しながら、32ビットから64ビットへ拡張を果たしたOpteronは、インテルを仮想的な競合とした時の直接の“武器”になる。

 一方で、従来のメインフレーム市場までをターゲットとしたハイエンド市場向けのプロセッサを開発しており、現在、2つのスレッドを同時に処理できるデュアルコアの「UltraSPARC IV」が、チップ・マルチ・スレッディング(CMT)技術の最先端の成果にあたる。「UltraSPARC IV」はデュアルコア設計技術を採用し、「UltraSPARC III」2つを1つのシリコン上に収めたもので、このデュアルコア設計技術は、IBMやヒューレット・パッカード、インテル、AMDなども採用するプロセッサ開発技術の1つのトレンドである。「UltraSPARC III」「UltraSPARC IV」はテキサス・インストゥルメンツが130nmプロセスで製造しているが、1年以内に90nmプロセスを採用した『UltraSPARC IV+』を出荷する予定である。

 これらのSPARCプロセッサがCMTを活用した第1世代とすると、開発コード名「Niagara」と呼ばれるチップは、4つのスレッドを扱えるチップコアを8つ使う仕組みを採用して、32のスレッドを同時に処理可能とするCMT第2世代のプロセッサだ。2006年ごろにリリース予定である。同プロセッサは「ネットワーク集約型のコンピューティング環境を構築する場合」(イェン氏)というように絞り込まれた用途のために開発されている。「Niagara」という開発コード名は「製品ファミリ名であり、具体的にUltraSPARCのどのバージョンにあたるかということはいまの時点ではいえない」(イェン氏)。つまり「Niagara」は特定の用途をターゲットとしたファミリーラインと考えた方がいい。

 「UltraSPARC IV」の直接の後継として2006年〜2008年にかけてリリースする予定なのが、富士通と共同開発をしている開発コード名「Advanced Product Line」(APL)で、その後にシングルスレッド処理で最高の性能を発揮する「Rock」というプロセッサファミリが控えている。イェン氏は「Rock」について、「データ集約型のコンピューティング環境に最適なアーキテクチャを開発している。『Rock』で成し遂げられるであろう革新性こそが、次世代のスーパーコンピュータと呼ばれる環境の基盤となる」とし、同社のプロセッサ戦略の方向性に自信をみせた。

(編集局 谷古宇浩司)

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