3次元LSIを量産、東北大ベンチャーの可能性は

2004/11/16

 LSI開発のザイキューブは東北大学の小柳光正教授を取締役CTOに迎え、小柳教授が開発した積層型3次元LSIの実用・量産化をスタートさせると11月15日に発表した。積層型3次元LSIは複数のチップやウェハースを積み上げて1つのLSIとして稼働させる仕組みで、現状の2次元LSIの問題点を解決するとして世界中で研究が進んでいる。小柳教授はすでに積層型3次元LSIの研究・開発フェーズを終えたとして「量産化の可能性が高い」と優位性を強調した。

東北大学教授でザイキューブの取締役CTOに就いた小柳光正氏

 小柳教授が開発した積層型3次元LSIはセンサーチップやアナログIC、LSI、プロセッサ、メモリなど異なる種類のチップを積み上げる。各層の間を貫通させてチップ間の配線となる埋め込み配線をつくる。平面に複数のチップを配置する現在の2次元LSIと比較して、配線の距離が短くなるという特徴がある。配線距離を短くすることで、従来のLSIと比べて高性能化や低消費電力化が期待できるという。また、チップを接続する配線は複数配置することが可能で、チップの並列動作ができる。小柳教授は人口網膜チップのような超並列動作が求められるチップの開発が可能になるとしている。

 小柳教授はすでに世界初の10個のチップを積み上げた10層の3次元LSIを試作している。ザイキューブではチップ自体を開発することはせず、他社のチップを積み上げて新しいLSIを開発することに専念する。チップ開発を行わないことで開発期間の短縮やコストの低減が可能になるとみている。製造工程に投資するコストも「従来の工程に比べて10分の1になる」(小柳教授)という。

 ザイキューブは小柳教授の3次元LSIを実用・量産化するために2002年に設立された企業。実用・量産化の目処が見え始めた今春から活動を本格化させた。ザイキューブの代表取締役 盆子原學氏はザイキューブの事業としてデバイス設計や生産設計、装置設計のほかに、ほかのベンダから請け負ってLSIの試作や少量生産などを行うと述べた。すでに米国シリコンバレーに子会社を設立済みで、海外のベンダとの事業も積極的に行っていく。

 開発は主に東北大学キャンパスに隣接したザイキューブの仙台開発センターで行う。東北大学との共同研究も続ける。2005年4月には3次元LSIの8インチプロセス設備を1ライン導入し、2005年初夏の本格稼働を目指す。2007年に上場、2009年には500億円の売り上げと急成長を狙っている。盆子原氏は「世界の技術はわれわれが押さえているとみている」と述べ、3次元LSIの実用・量産化に大きな自信をみせた。

(編集局 垣内郁栄)

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