NECがアビームを傘下に、「顧客基盤は大きな財産になる」

2004/11/17

 NECはアビームコンサルティングと資本提携し、2004年12月にアビームの株式の35%を取得すると11月16日に発表した。NECは段階的に出資比率を高め、2010年までに100%の株式を取得、アビームを100%子会社にする。NECの代表取締役社長 金杉明信氏は「両社のソリューションを生かしてアジアマーケットに事業拡大していきたい」と述べ、アビームを傘下に収める理由を説明した。

NECの代表取締役社長 金杉明信氏(右)とアビームコンサルティングの代表取締役社長 西岡一正氏。2人は面識はなかったが「あるきっかけで西岡さんと会い、かなり思い切った議論してお互いを理解した」(金杉氏)という

 NECはアビームが12月に実施する第三者割当増資を引き受け、約100億円を出資する。2005年3月末までに追加出資し、50%以上の株式を握る。2010年までに株式を完全取得する。NECはアビームを吸収・合併せず、独立会社として残す。

 NECがアビームを子会社化する目的は中国、アジア市場の拡大。NECは、アビームの中国、アジアの実績をベースに、中国、アジアに進出した日本企業や現地企業へのコンサルティングやERPパッケージ関連サービスを拡充する考え。アビームは中国、アジアでERPパッケージを中心に500社の顧客企業を抱えていて、コンサルタントを現地に駐在させている。「アビームの顧客のリピート率は70%。アビームのカスタマーベースはNECの大きな財産になる」(金杉氏)としていて、NECはアビームを傘下に収めることで優良な顧客の取り込みを狙う。

 アビームによると、アビームのSAPジャパン認定コンサルタントは1400人以上で日本で最多。190を超えるSAPプロジェクトを担当してきたという。金杉氏は「アビームにはコンサルティングだけでなく、インプリメンテーションの力にも期待したい。NECはSAPで出遅れた。しかし、アビームはSAPの上流からインプリメンテーションで国内トップ。しかもユーザーの満足度が高い」と期待を示した。

 ERPパッケージだけでなく、NECが展開するシステム構築やネットワーク構築などでもNECはアビームのコンサルタントを利用する。特にNECが注力したいのはアウトソーシング。金杉氏は「コンサルティングの強化だけでは100%の株式を取得する必然性はないかもしれない。しかし、アウトソーシングの拡大ではより一体が望ましいと判断した」と説明した。

 アビームの代表取締役社長 西岡一正氏は「アビームはグローバルな組織をつくるという目標を持っている。アジア発のコンサルティングファームになることを目指す」と話し、「スピードを上げて成長したい。その目的に一番かなうのがNECとの戦略的パートナーシップだった」と説明した。アビームはNECの傘下に入ることで成長を加速させ、2004年の売上高332億円を2010年には1000億円まで伸ばすことを目指す。現在、2000人の社員も1万人にするという。

 ただ、どのベンダにも依存しないことが顧客の信頼を生んでいるコンサルティング業務では、NECの傘下に入ることはデメリットになるかもしれない。NEC以外のベンダとの付き合いも難しくなるだろう。西岡氏は「オープン環境ではそういうことはない」とこの見方を否定。NECのサーバやネットワーク機器などを優先的に導入するのかという見方についても「顧客が決めること。NEC製品のサポートはするが、顧客の選択がわれわれの行動の規範とする」と述べ、否定した。

 アビームの前身はデロイトトーマツコンサルティング。米国のエンロン事件などの影響で監査法人とコンサルティング会社を分離する流れがあり、2003年1月に監査法人トーマツとの資本関係を解消した。その後、デロイトトーシュトーマツグループから独立し、日本法人はブラクストンとして活動。2003年11月にアビームコンサルティングに改称した。国内、アジアを中心にコンサルティング、インプリメンテーションを行っている。

 NECは2004年3月29日、スウェーデンの業務アプリケーション・ベンダ「Industrial and Financial Systems」(IFS)に出資し、中国、アジアでの業務アプリケーションの開発、販売、サポートなどで協業すると発表。また、11月1日には中国、アジア市場のSCM構築で米i2テクノロジーズと提携したと発表した。中国、アジア市場の拡大を目指し、パートナーシップの強化、再構築を進めている。

(編集局 垣内郁栄)

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NECの発表資料
アビームコンサルティング

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