基幹系進出で4500億円のLinux市場を狙うNEC

2004/9/28

 NECはLinux関連ビジネスのシステム・インテグレーション(SI)、サポートサービス、プラットフォームの3つを強化し、企業や公共の基幹系システムにLinuxを本格的に適用する「NEC エンタープライズLinuxソリューション for MC」を開始すると9月27日に発表した。NECは従来からLinux対応のIAサーバを販売し、企業の情報系システムに対してLinuxを提案してきたが、今後はLinuxをUNIX、Windowsに続くオープン系プラットフォームの3本目の柱と位置付けて、ミッションクリティカルなシステムにも積極的に適用する。2007年にはLinux関連ビジネスで900億円の売り上げを目指す。

NEC 代表取締役副社長 川村敏郎氏

 NECはこれまでもLinux関連ビジネスを展開してきた。NECの代表取締役副社長 川村敏郎氏によると、Linux対応のIAサーバの2003年の国内出荷金額シェアはNECがトップ、Linux関連のSI売り上げでもトップだという。すでに1200のLinuxサイトを構築した。だが、Linux関連ビジネスの売り上げはNECのビジネスの中でわずか2%程度に過ぎず、「ビジネスとしては揺籃期」(川村氏)。UNIXとWindowsの合計額が全体の75%を占め、メインフレームも8〜9%残っているという。

 Linux関連ビジネスが本格化しないのは、適用分野がインターネットのフロントエンドや情報系システムなど比較的小規模な案件に集中しているから。NECによると現在の同社のLinuxビジネスのうち、80%はフロントエンドのシステムでの利用。残りの20%も中小規模の情報系システムだという。NECは今後、Linux関連ビジネスのプラットフォーム、SI、サポートサービスの3分野を強化することで、基幹系システムへの本格適用を図る。川村氏は「NECの成長戦略としてLinuxの基幹系システム適用に経営資源を投入する」と決意を示した。

 プラットフォームの強化では、次世代ACOS、NX7700i、Express5800を含むすべての基幹サーバにLinuxを搭載できるようにする。オープンソースソフトのコミュニティと協力し、Linux OSの障害解析機能やRAS機能、仮想化機能などを強化する。さらにNECのミドルウェア基盤「VALUMO」のLinux版を2005年度末までにHP-UXやWindowsと同等までに強化する。特に自律運用管理やプロビジョニング、可用性を高めるミドルウェアは早期にLinuxに対応させる考えだ。

 SIの強化では業種別のパッケージの導入を計画している。ERPなどのアプリケーションとサーバ、ミドルウェア、サポートサービスを組み合わせて検証済みのパッケージ製品を開発し、「業務アプライアンス商品」として企業に提供する。

 サポートサービスの強化では、NECグループのLinuxエンジニアを現在の2400人から2005年度中に4800人まで増員する。さらにシステムの動作検証を行う「Linux/OSS検証センター」を10月に新設し、エンドユーザーやパートナーがハード、ソフトの組み合わせ検証できるようにする。NECではサポートサービスを充実させることで「企画・コンサルから運用・保守に至るまでのライフサイクル全般のサービスを提供できる」としている。

 NECでは、国内のLinux関連ビジネスは年率25%成長し、2007年に4500億円の市場規模に拡大するとみている。NECは基幹系システムへの進出でこの新興市場の奪取を目指す。川村氏は「他社も取り組んでいるが、NECはUNIX、Windowsなどオープン系プラットフォームでのミッションクリティカルシステムへの適用では業界トップにあると自負しているし、かなりの実績もある」と述べたうえで、「この実績をLinuxにぶつけます」と自信をみせた。

(編集局 垣内郁栄)

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NECの発表資料

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