オートノミック・コンピューティング、3年間の成果、IBM

2004/12/7

米IBM グリッド&バーチャリゼーション 担当副社長 アルバート・バンシャフト(左)とオートノミック・コンピューティング担当バイスプレジデント アラン・ガネック氏(右)

 米IBMがオートノミック・コンピューティングの研究・開発に本腰を入れはじめて3年がたった。この3年間で同社が取得したオートノミック・コンピューティング関連の特許数は200以上、製品化数は50以上にのぼる。最新の成果には、半導体チップが自律的に自身の状態を監視し、パフォーマンスや消費電力などを動的に調整するモーフィング技術「eFuse」がある。米IBM オートノミック・コンピューティング担当バイスプレジデント アラン・ガネック(Alan Ganek)氏は「オートノミック・コンピューティングはすでに実現されている」と話す。

 オートノミック・コンピューティングとはいわば、IBMが目指すコンピューティング環境を実現するためのコア・テクノロジの総体を指す用語であり、同社がマーケティング・キーワードとして世界中に発信する「OnDemand」を技術的な側面から支援する概念ともいえる。その概念は「不測の事態に対応する能力」「継続して自身をチューニングする能力」「障害を予防し、回復する能力」「安全な環境を提供する能力」といった自律的な能力群で構成されている。同社では、これらの能力がIBMの開発するさまざまな製品に組み込まれることで、コンピューティング環境総体として自律的に動作することを狙う。

 ただし、オートノミック・コンピューティング環境が実際に稼働するには、他社製品との協調動作が必要なのはいうまでもない。故に、同社は研究・開発を通じて生み出した新仕様の標準化を実現するために、ビジネス・パートナーとの連携を強め、同時に標準化団体への積極的な働きかけも行っている。現在では17種類の新仕様を標準化団体に提出している。

 オートノミック・コンピューティングのようなコア・テクノロジの研究・開発に力を入れる一方、同社では、グリッド・コンピューティングに対しても積極的な姿勢をみせている。現段階では、研究リソースのデータ共有をはじめとした学術・研究分野での活用が主流で、ビジネス・アプリケーションでの適用事例はほとんどない。

 しかし、コンピューティング資源の活用用途をビジネスに限定する必要はない。実際、余っているリソースをほかの用途に活用することは社会的にも意義のあることだという風潮が世界規模で広がっている。

 11月16日にIBMなどが米国で発足した「ワールド・コミュニティー・グリッド」は、個人や企業が所有するコンピュータのリソースを活用して、医療・社会分野の課題解決を支援する。例えば、AIDS、アルツハイマー病といった深刻な疾病のもとになる遺伝子の解析や自然災害の予測精度の改善に、世界中のコンピュータの処理能力を活用する。

 活動の第1弾は「ヒトのたんぱく質解析プロジェクト(Human Proteome Folding Project)」だ。参加するには「ワールド・コミュニティー・グリッド」のWebサイトにアクセスし、ソフトウェアをダウンロードして登録するだけでよい。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
日本IBMの発表資料(1)
日本IBMの発表資料(2)

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