日銀がXBRLの実証実験、「大胆に取り組みたい」

2004/12/16

 日本銀行の考査局 金融データ管理担当総括 和田芳明氏は12月15日、「XMLコンソーシアム 第2回ユーザーシンポジウム」(主催:XMLコンソーシアム)で講演し、日銀が行ったXBRLの実証実験の概要を説明した。和田氏は「慎重性を重んじる中央銀行だが、未来の可能性を持つ技術については大胆に取り組んで生きたい」と述べ、実用化を目指す考えを示した。

日本銀行の考査局 金融データ管理担当総括 和田芳明氏

 日銀は2003年12月から金融機関と共同でXBRLを使った財務データ伝送の実証実験を行った。対象となった財務データは金融機関が日銀の考査局に報告する月次財務報告計表と年度、半期の決算報告計表。従来、これらのデータは各金融機関がExcelファイルやWordファイル、テキストファイルなどさまざまなフォーマットで考査局に送信していた。実証実験はこれらの財務データをXBRLに統一することで「受け取りをいかに効率的に行えるかを検証した」(和田氏)。XBRLデータの伝送には日銀が構築し、2004年3月末から段階的に利用しているIP-VPNの「考査オンライン」を活用した。

 実証実験はまず日銀がXBRLベースの報告書の書式ファイルを用意。金融機関は考査オンラインを通じてこの書式ファイルをダウンロードする。金融機関は日銀から配布されたXBRL用のツールを使ってこの書式ファイルに財務データを入力する。財務データは日銀の公開鍵で暗号化。考査オンラインを通じて日銀に伝送する。日銀は秘密鍵で財務データを復号化する。

 実証実験は2段階で実施した。第1段階は都市銀行4行が参加して2003年12月から2004年3月にかけて行った。第2段階は地方銀行31行が参加し、2004年7月に実施。日銀がXBRLのバージョン2.0を使い月次財務報告のタクソノミ(taxonomy:分類)を作成。地方銀行が問題なくXBRLの財務データを作成し、日銀で受領、再現できることを確認したという。和田氏は「全国の地方銀行が参加したため、トラブル時のサポートが懸念だった。電子メール、電話のサポートを用意したが大きなトラブルはなく、データを作成してもらえた」と説明。「XBRLについての特別な知識がなくても財務データの報告が実現可能なことが確認できた」という。

 実証実験の第2段階ではさらにパート2として都市銀行が参加し、XBRLバージョン2.1を使った実験を行った。この実験でも考査オンラインを通じてXBRLの財務データを日銀が受領、再現できることを確認できたという。

 実証実験に参加した金融機関からは、財務データを作成する際にデータの正当性をチェックできる機能や、財務データに注記を付ける機能などが今後の要望として挙げられたという。実験を通じてXBRLの導入の必要性を感じたという金融機関は、実証実験に参加したうちの約6割だった。

 和田氏は実証実験について「XBRLに注目したのは情報の高度活用で高い可能性があると判断したから。金融機関は監督当局に求められたからXBRLを利用するというだけでは十分ではない。XBRLの利点が理解されて、金融機関の内部業務の効率化のためにXBRLが利用されないと、本当の普及にはならない」と語った。

(編集局 垣内郁栄)

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