シマンテックがベリタス買収、意外な組み合わせの背景は?

2004/12/18

 米シマンテックは米ベリタスソフトウェアを買収すると12月16日(米国時間)に発表した。買収総額は135億ドル(約1兆4000億円)。シマンテックはベリタスのストレージ管理ソフトウェアを取り込むことで、セキュリティを含めて包括的なデータ管理ソリューションを提供する巨大ソフトウェアベンダとなる。

米ベリタスを買収した米シマンテックの会長兼CEOのジョン・トンプソン氏

 新生シマンテックは、個人向けから企業のデータセンター向けまで幅広いソフトウェアのラインアップをそろえることになり、ソフトウェア業界で存在感が増すことは確実だ。新会社の2006年度売上高は約50億ドルを想定。ソフトウェア専業のベンダとしてはマイクロソフト、オラクル、SAPに次ぐ業界4位になる。

 買収は株式交換方式で行われ、交換比率はベリタス1株に対してシマンテック1.1242株。新生シマンテックの会長兼CEOは、現シマンテック会長兼CEOのジョン・トンプソン(John W. Thompson)氏が就任。ベリタスの会長兼CEO ゲイリー L.ブルーム(Gary Bloom)氏は新生シマンテックの副会長兼社長となる。新会社の役員会はシマンテックの現役員6人とベリタスの現役員4人の計10人で構成する。買収の手続きは2005年第2四半期中に完了する見通し。

 シマンテックはここ1〜2年、買収によって事業領域を拡大してきた。2003年から2004年にかけてPowerQuestやOn Technology、Brightmailなど数社を買収した。買収の狙いはコンシューマ向け製品中心のビジネスモデルを脱却し、エンタープライズ向けの製品、サービスをもう1つの柱に育てること。シマンテックはベリタスを買収することで、ベリタスが市場で高いシェアを持つバックアップ/リカバリやディザスタ・リカバリ、アーカイブ関連のなどのストレージ管理ソフトウェアを取り込むことができる。

米ベリタスソフトウェアの会長兼CEO ゲイリー L.ブルーム氏

 一方、ベリタスはストレージ管理ソフトウェアに依存したビジネスから脱却すべく、他社の買収などで製品拡充を急いでいた。2003年からは「ユーティリティ・コンピューティング」をキーワードにサーバのリソース仮想化、運用管理の自動化、アプリケーションのパフォーマンス管理などストレージとは異なる分野の製品を出荷してきた。シマンテックはこれらの製品を取り込み、セキュリティ機能を実装したデータの自動アーカイビング製品などを開発できるようになる。

 ベリタスがシマンテックによる買収を受け入れた背景には、ソフトウェアベンダの合従連衡が続く中で、将来的には単独での生き残りが厳しいとの判断もあったと思われる。2003年10月にはストレージ最大手の米EMCがバックアップ/リカバリソフトを開発していた米レガートシステムズを買収。EMCはレガートシステムズの技術を自社のソフトウェア、ハードウェアに取り込み、「情報ライフサイクル管理」(ILM)を強力に打ち出している。EMCはソフトウェア事業を今後も拡大させる考えで、ベリタスにとっては強力なライバルとなる。

 シマンテックとベリタスの現在の企業規模は拮抗している。シマンテックは社員数6000人で、2004年度の売り上げは18億7000万ドル。ベリタスは7600人の社員がいて、2003年度の売り上げは17億5000万ドルとなっている。シマンテック、ベリタスともWindows、UNIX、Linuxなど複数のプラットフォームに向けて製品を開発していて、ヘテロジニアス対応でも似通っている。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
シマンテックの発表資料
ベリタスソフトウェアの発表資料

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