ミドルウェア統合にSOA、「Oracle 10g R2」の狙いを読み解く

2005/2/25

 日本オラクルは2月24日、アプリケーションサーバの最新版「Oracle Application Server 10g Release 2」(以下、AS 10g R2)を2月25日に発売すると発表した。24日から都内で開催中のイベント「Oracle 10g World」で講演した米オラクルのサーバーテクノロジー・ディビジョン担当 エグゼクティブ バイス プレジデント チャールズ・ロズワット(Charles Rozwat)氏は、「AS 10g R2はアプリケーションレベルのクラスタリングを実装し、インフラストラクチャ全体のグリッド化が完成する」と述べ、システム全体のグリッド・コンピューティングに対応可能になったことをアピールした。

米オラクルのサーバーテクノロジー・ディビジョン担当 エグゼクティブ バイス プレジデント チャールズ・ロズワット氏

 データベース製品の最新版「Oracle Database 10g Release 2」は国内で今夏に提供を開始する予定。「Oracle JDeveloper 10g Release 2」は2月25日に発売する。

 AS 10g R2の特徴はグリッド対応の機能を強化し、複数のアプリケーションサーバ間でのリソースの割り当てを可能にしたこと。1つのアプリケーションサーバがダウンしたり、プロセッサの使用率が高まった場合、AS 10g R2はそのサーバが行っていた処理を別のアプリケーション・サーバに肩代わりさせる。システムの可用性が向上するとともに、サーバ・リソースの使用率が上がるため、無駄な投資を避けることができる。ロズワット氏の講演では、4ノードのLinuxクラスタを稼働させて、1ノードを停止、そのノードの作業を別のノードが自動で引き受けるデモンストレーションが示された。

 AS 10g R2がグリッドに対応したことで、データベース、アプリケーションサーバ、ストレージ、運用管理ソフトウェアなどシステム全体でのリソースの仮想化と、アプリケーションのプロビジョニングが可能になる。ロズワット氏はこれらのグリッド・コンピューティングを実現するミドルウェアを“インフラストラクチャ”という言葉で表現。それぞれのミドルウェアを別々に利用して、他社のミドルウェアと組み合わせるのではなくて、ミドルウェアをOracle 10gファミリに統一し、統合的に使うことのメリットを強調した。ミドルウェアを統合することで「すべてのITリソースのためのグリッド・コンピューティングが実現する。グリッドの活用で、リソースとしての情報を生み出せる」(ロズワット氏)。

 AS 10g R2のリリースによりグリッドというインフラストラクチャが完成し、オラクルが次に踏み出したいのは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)だ。SOAは複数のアプリケーションを統合し、1つのサービスとして単一のインターフェイスで提供する技術。AS 10g R2では複数のアプリケーションをXML技術を使って統合する「エンタープライズ・サービスバス」(ESB)や「Oracle BPEL Process Manager」を実装し、「コンポジット・アプリケーションを作ることができる」(ロズワット氏)。ESBやBPELなどSOAを実現する機能を載せることで、他社のアプリケーションやレガシーアプリケーションを統合することも狙っている。

 また、AS 10g R2は複数のアプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムに監視する「Business Activity Monitoring」を実装。ロズワット氏は「ビジネスのルールに基づき、アプリケーションをモニタリングできる」と説明した。AS 10g R2にはシステムの構成や稼働状況をビジュアルに確認できる「トポロジビューア」を新しく搭載する。また、6月には検索機能を提供する「Oracle Enterprise Search」がAS 10g R2に追加される予定だ。

 Oracle 10g Worldの冒頭にあいさつした日本オラクル 代表取締役社長の新宅正明氏は、「(出荷台数に占める)Linuxの比率が上がってきた」と述べ、データベースやアプリケーションサーバのプラットフォームにLinuxを選択する顧客が増えてきたことを説明した。新宅氏によると、UNIX、Windowsなどオラクル製品がサポートするプラットフォームの中でのLinuxの比率は、2003年は出荷台数で10%未満だった。しかし、「過去6カ月では2ケタになった。出荷台数が倍増している。ハイエンドのRACでの利用も視野に入ってきた」(新宅氏)。新宅氏は、「Linux浸透の芽が出てきた」として、2006年度にも出荷台数で30%を目指す考えを示した。

(@IT 垣内郁栄)

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日本オラクル

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