[Oracle OpenWorld開催]
「Data Hubsは情報時代の企業を発展させる」、オラクル

2004/12/10

 米オラクルのCEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏は12月8日(米国時間)、開催中のOracle OpenWorldで基調講演し、オラクルが提供を開始している「Data Hubs」について「単一のグローバルなシングルデータベースを構築するための近道になる」と述べ、重要性を強調した。「製造プロセスの自動化が製造業を発展させてきたように、情報のプロセスの自動化が情報時代の企業を発展させる」と語り、オラクルの今後の戦略を説明した。

米オラクルのCEO ラリー・エリソン氏

 エリソン氏は企業の課題について「大切な情報が複数のデータベースに格納されていて物理的に分散しているのが問題。データのあり方が間違っている」と指摘。解決するには「単一のグローバルなシングルデータベースしかない」と述べた。しかし、すでに分散しているデータを1つの巨大なデータベースに収めるにはコスト、時間が膨大に掛かる。そのためオラクルが推奨しているのがWebサービスを使って異なる情報システムが相互にデータを更新し合えるようにする「Data Hubs」の利用だ。

 オラクルは業務アプリケーションにある顧客データを統合する「Customer Data Hub」をすでに出荷しているが、エリソン氏は、金融機関などが顧客の信用情報、与信情報を1カ所のデータベースに格納する「グローバル・クレジット・データベース」で最初にData Hubsが利用されると説明した。「リアルタイムにさまざまな金融機関に分散した顧客の与信情報を確認して、クレジットカードの利用などを判断できればとても便利になる」。

 複数の情報システムのデータを1つのデータベースに格納する考えは新しくない。データウェアハウス(DWH)なども同じ考えでデータを統合し、ビジネス・インテリジェンス(BI)の分析に利用されている。しかし、エリソン氏は「DWHはデータを抽出するだけ。Data Hubsはリアルタイムにデータを一貫性を持って保存する。データを中心に360度の角度で全面的にビジネスの現状が分かる」とその違いを説明した。

 Data Hubsが正しく運用された場合、企業のビジネス活動の中心になることは間違いない。ビジネスに関するすべての情報はData Hubsを通って提供され、停止が許されないミッション・クリティカルシステムになる。エリソン氏は「Data Hubsは壊れることなく、社員全体が使い続けることができるシステムでなくてはいけない」と指摘したうえで、「このようなシステムを構築するにはグリッド上につくるしかない」と述べた。しかも、Data Hubsは企業の成長や情報システムの変化に柔軟に対応するスケーラビリティが必要になる。そのためシステムは「高価なメインフレームではなく、小型で割安、信頼できるクラスタ化されたサーバ」(エリソン氏)で構築することになる。

 エリソン氏はData Hubsの適用ケースについてすでに発表している「Product Data Hub」「Citizen Data Hub」「Financial Consolidation Hub」などのほかに医療カルテのハブや異なる国や運輸会社で荷物をスムーズに輸送するためのロジスティックスハブが考えられると説明した。ただ、Data Hubsの概念をさまざまなビジネスに広げるにはデータの質をどう保つかが課題になるという。Data Hubsにはデータを取り込む際にほかの情報システムで利用できるようデータを“クレンジング”する機能があるが、この機能の高度化がData Hubs普及の鍵になるようだ。

オラクルのSOAはData HubsとBPELで実現

 米オラクルのサーバーテクノロジー・ディビジョン担当エグゼクティブ・バイスプレジデント チャック・ロズワット(Chuck Rozwat)氏も12月8日に講演し、2005年中ごろに登場するOracle 10g Release 2について「インフラだけでなく、アプリケーション、情報の仮想化とプロビジョニングが可能だ」と説明した。

米オラクルのサーバーテクノロジー・ディビジョン担当エグゼクティブ・バイスプレジデント チャック・ロズワット(左)とプロダクト・ストラテジー担当バイス・プレジデントで“ドクターDBA”と称されるケン・ジェイコブス氏

 Oracle 10g Release 2で強化したのがSOA(サービス指向アーキテクチャ)の対応だ。特に「Oracle Application Server 10g Release 2」はアプリケーションのプラットフォームからアプリケーション、ビジネス・プロセス統合のプラットフォームとしての性格を強めた。ロズワット氏はオラクルのSOAについて「Webサービスの標準技術を使い、複数のアプリケーションをポイント・トゥ・ポイントで連携し合い、コンポジット・アプリケーションを実現する」と説明。技術要素としては複数のData Hubsを連携させる「Enterprise Service Bus」と、Oracle Application Server 10g Release 2に実装した「Oracle BPEL Process Manager 10g」を使ってSOAを実現すると述べた。

 さらにSOAの環境を監視するために「Business Activity Monitoring」(BAM)をOracle Application Server 10g Release 2に実装した。ロズワット氏は「BAMを実装したことで個々のコンポジット単位での管理が可能になる。ビジネス・プロセスを最適化する」と説明した。

(編集局 垣内郁栄)

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