データに続いて音声も定額制へ、ウィルコムのPHSな野望
2005/3/16
ウィルコム 代表取締役社長 八剱洋一郎氏 |
ウィルコムは3月15日、国内の移動体通信としては初となる定額制の音声サービス「ウィルコム定額プラン」を5月1日に開始すると発表した。同社はモバイルデータ通信のAIR-EDGEサービスにおいて、すでにパケットデータ通信完全定額制サービスを提供している。今回発表したサービスにより、データ・音声両方の定額制サービスが実現することになる。
「ウィルコム定額プラン」は、月額基本使用料(2900円)だけでウィルコム端末(PHS端末)間の音声通話と直通メール、電子メールの送受信が無料になるサービス。ただし、相手先がウィルコム以外の端末である場合は通話料がかかる。固定電話やIP電話の場合は30秒10.5円、携帯電話の場合は30秒13.125円、パケットデータ通信(1xパケット方式)ではパケットにつき0.021円かかる。同社 代表取締役社長 八剱洋一郎氏によると、(相手先が)固定電話の場合は通話料が無料になるよう、現在、国内の複数のキャリアと交渉中だが、携帯電話については交渉以前の段階であるという。
同社はこれまでの10年間をかけて、バックボーンのIP化と並行し、マイクロセル方式による基地局の増設を行ってきた。
従来のバックボーンの仕組みは、基地局からIDSNを通じてNTTのIDSNネットワークを利用するものだった。この場合、ネットワークのコストは通話料に応じて課金される従量制を採用しており、通話をすればするほどコストがかさむ構造になっていた。そこで同社はISDN網を光ファイバ(IP)網に移行し、ITXを通じてIPネットワークで通信が可能な体制に移行した。この独自IPバックボーンにより、定額コストが実現することになった。
また、音声サービスの定額制で懸念されるのは、無線容量のコントロールである。国内の携帯電話キャリアは、1基地局で広いエリアをカバーするマクロセル方式を採用しているが、突発的にトラフィックが増大した場合、1基地局に多数のユーザーが集中し、ユーザー当たりの速度や容量が低下する傾向にある。同社は基地局を分散させることで、トラフィックを分散させるマイクロセル方式を採用している。2005年度末までに「人口カバー率は99%に達する」(八剱氏)見通しで、現段階でもすでに約16万のマイクロセルネットワークが日本全土に張り巡らされている。加えて、現在は1基地局につき、3チャンネルが対応できるが、順次10チャンネル対応の基地局へと置き換えていく計画もある。
このようなインフラ部分の投資額は2005年度で基地局100億円、ITX60億円、その他120億円である。これらの投資額は「2004年度と比較して2倍とまではいかないが、それに近いほどの額」(八剱氏)である。
データと音声を合わせて同社のユーザー数は約300万人。今回の音声定額制サービスで「100万人は無理だとしてもそれに近いユーザー数を獲得したい」と八剱はいう。10年間かけて構築した広大なマイクロセルネットワークと独自IPバックボーンを基盤に同社は、日本を席巻している携帯電話市場に戦いを挑んでいくことになる。
(@IT 谷古宇浩司)
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