日本発のユビキタス基盤を開発したい、NTTデータなど4社

2005/4/21

 NTTデータとNEC、富士通、日立の4社は4月20日、ユビキタス社会の早期実現に向けて、IDをキーとしてさまざまなITシステムを連携できるサービス基盤「IDコマース基盤」の共同検討を始めると発表した。2006年1月から実証実験を開始し、2006年7月からのビジネス展開を狙う。具体的には、モノに付与されるIDをキーとして、情報の流通を総合的に管理し、多くのシステムや機器の連携を目指す。

左から、NEC 執行役員常務 伊久美功一氏
NTTデータ 代表取締役副社長 中村直司氏
富士通 取締役専務 班目廣哉氏
日立製作所 執行役常務 篠本学氏
 NTTデータ 代表取締役副社長 中村直司氏は、現在のユビキタスネットワークの状況を「各社よりサービスが提供されているが、決してユビキタス社会が到来しているとはいえない状態だ」と断言。「従来のユビキタス向けシステムや機器間では、連携ができていない。ユビキタスは“いつでも、どこでも”がコンセプト。現実的にこのコンセプトを実現するには、システム間の連携が必ず必要になってくる」と解説した。逆に、多くのシステムが連携できれば、ユビキタス社会の実現を促進できると考えているという。

 しかし、システムを連携する際にはさまざまな障害が立ちはだかる。中村氏は、問題として「セキュリティ」「ID」「システム」の3点を挙げた。セキュリティは、自社のITシステムと外部との接点が増加することでリスクが増加する。このため、セキュアなアクセス環境が必要だ。IDでは、企業や業界が異なると、同じモノに対してでも異なったID情報を付与している場合が多い。このため、既存のシステムに共通のID情報を流通させるシステムを構築しなければならない。システムでは、既存の業務システムとID情報システム間の連携が進んでいないため、サービス提供に限界があるというものだ。両システム間を簡単に連携できる仕組みが必要だとしている。

 IDコマース基盤では、モノや人に付されたIDをキーとして、情報の流通を総合的に管理し、多くのITシステムや機器を連携させようというコンセプトだ。このコンセプトの下に、ユビキタスサービスの次世代インフラの開発や、ユビキタスサービス市場の立ち上げ、標準化団体への貢献を検討している。現時点では、NTTデータとNEC、富士通、日立の4社が参加し、事務局はNTTデータが担当する。今後は参加企業の拡充を目指す。

 具体的には、ワーキンググループを設置して検討を開始し、IDコマース基盤の機能要件とインターフェイスを検討。次に、参加企業を募集しながら、プロトタイプシステムを構築して、相互接続性を検証する。検証後には、標準化団体などを通して成果を公開し、成果に基づいた製品化を各社で実施する予定だ。

 スケジュールは、4月から検討を開始し、8月からはIDコマース基盤の設計や開発・テストを行う。続いて、2006年1月から実証実験を行い、7月には成果を発表する予定だという。IDコマース基盤の実用的な例として、中村氏は「流通トレーサビリティはすでに始まっているが、生産者と物流業者、小売業者の3者がそれぞれ異なったシステムを利用していたとする。従来であれば、それらのシステム連携は非常に難しいが、IDコマース基盤では連携が容易に可能になるだろう」と説明した。

 富士通 取締役専務 班目廣哉氏は、「ユビキタスは実用化段階に入りつつある。高信頼性と高処理技術によって、ユビキタス社会を実現し、安定させたい。日本発のインフラを世界にアピールしたい」と抱負を語った。また、日立製作所 執行役常務 篠本学氏は「愛知万博では、当社の非接触ICチップ『ミューチップ』が入場券に利用されている。ここでもシステム間の連携が重要であった。今後はユビキタス社会を発展させるためにも、IDコマース基盤が重要になってくると考えている」と述べた。

(@IT 大津心)

[関連リンク]
NTTデータ報道発表資料

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