仮想化技術研究に苦節35年、IBM
2004/5/11
日本IBM 理事 システム製品事業 iSeries事業部長 花井貢氏 |
日本IBMは5月10日、同社の最新プロセッサ「POWER5」1.65GHzを搭載した「IBM eServer i5(以下eServer i5)520/570」を6月11日に出荷すると発表した。eServer i5シリーズは、旧AS/400の後継シリーズだった「eServer iSeries」の名称を変更したもの。OSの名称も「i5/OS」に変更した。日本IBM 理事 システム製品事業 iSeries事業部長 花井貢氏は「(今回のラインアップ刷新により)IBMのメインフレーム機zSeriesを凌駕(りょうが)する性能を実現した」と自信を見せた。
eServer i5は、多様なベンダの製品で構成された異機種混在環境の統合やレガシーメインフレームのマイグレーションを1台のサーバで実現するために開発された製品である。そのためには仮想化、統合化、システムの最適化、拡張性といった現在のサーバに求められる要素を技術的にクリアしていなければならないのだが、これらの点について花井氏はかなりの自信を持っているようだ。
例えば仮想化に関して、同社は以前より「IBM Virtualization Engine(IBM仮想化エンジン)」というコンセプトを提唱していた。IBM仮想化エンジンとは、「POWER Hypervisor」「LPAR(論理区画)」「仮想Ethernet」「仮想I/O」といったソフトウェア/ハードウェア両面で、IBMが35年間にわたって培ってきた仮想化技術をさらに拡張して集大成したものである。eServer i5はIBM仮想化エンジンを実装した初めてのサーバであり、AIX 5L、64 ビットLinux、WindowsおよびintelベースのLinuxなど複数のオペレーティング環境を仮想的に集約することが可能である。
LPAR(論理区画)の面では、第3世代LPARとして「オートマチックLPAR」を提唱、それぞれの区画で、i5/OS、AIX 5LやLinuxをサポートし、余裕のあるCPU区画から処理能力が不足しているCPU区画に自動的にプロセッサ能力を移動させることができる機能を実現している。すべての区画のCPU使用率が100%に達した場合、リザーブキャパシティ
ー・オンデマンド(リザーブCoD)と組み合わせることで、システムが自動的にCPU資源を追加し振り分けることも可能である。
なおLPARは、資源の割り当てや区画構築、各区画の開始や停止を管理するHypervisor上で稼働する。そして、区画間のデータ転送には仮想LANおよび仮想オプティコネクトが使われている。
このような仮想化技術を実現することでeServer i5は、異なるOSで稼働する多様なアプリケーション環境を統合し、利用可能な状態に構築することができるようになった。そのカバー率は90%近いと同社では説明する。もちろん、IBMがその稼働(他社製アプリケーションの稼働)を完全に保障するわけではないが。
(編集局 谷古宇浩司)
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