漏えい対策だけじゃない、シトリックスが新製品で訴えたいこと
2005/5/27
シトリックス・システムズ・ジャパンは5月26日、サーバベース・コンピューティングで利用できるアプリケーションを拡大した「Citrix Presentation Server 4.0」を含む、スイート製品「Citrix Access Suite 4.0」を発表した。従来のPresentation Serverは基本的にマルチユーザー対応のアプリケーションしか利用できなかったが、仮想化技術を使うことでマルチユーザー非対応のアプリケーションでも利用できるようにした。
シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長 大古俊輔氏 |
シトリックスは、情報漏えい防止など特定の目的に利用するだけでなく、大規模ユーザーが全社で利用する「企業標準のITインフラ」とAccess Suite 4.0を位置付け、拡大を狙う。同社 代表取締役社長 大古俊輔氏は「Citrixアクセス・プラットフォームは、セキュアと自由なアクセスを両立させる」と説明し、「いつでも、どこからでも、さまざまな接続方法、さまざまなデバイスを使って完全にアクセスしたいという企業のニーズに応える」と述べた。
Access Suite 4.0に含まれるのは、サーバでアプリケーションを稼働し、個人ユーザーにその表示イメージだけを配信するシンクライアント・ソリューションを実現するPresentation Server 4.0。社内外のアプリケーション、サービスのシングル・サインオンを実現する「Citrix Password Manager 4.0」、クライアントPCのセキュリティ状態によってポリシーベースでアクセスできるアプリケーションや情報リソースをコントロールするSSL-VPNアプライアンス「Citrix Access Gateway 4.0」をパッケージングした。
Presentation Server 4.0は、新機能の「アプリケーション分離環境」を備え、マルチユーザー非対応のアプリケーションでもサーバベース・コンピューティングで利用できるようにした。アプリケーションが起動する際に利用するWindows OSのAPIをユーザーごとに起動できるようにして、「アプリケーションをだます」(同社 マーケティング本部 本部長 樋渡純一氏)ことで対応した。アプリケーション分離環境を使うと、アプリケーションは仮想的な同一リソースにアクセスしていると認識。しかし、実際にはユーザーごとの別々のリソースにアクセスしているという。発表会見ではマルチユーザー非対応の年賀状印刷ソフトウェアをPresentation Server 4.0で利用できることが示された。
また、Presentation Server 4.0は2004年に米Auremaと米RTO Softwareから取得した技術を活用し、サーバのCPUとメモリを最適化する機能を搭載。1サーバ当たりのユーザー数が最大25%増加したという。仮想IPアドレス機能も搭載し、サーバ上でVoIPアプリケーションを稼働して、IP電話を利用できるようにした。シトリックスによると、IP電話の利用では音声データが圧縮され、ICAプロトコルで通信するという。サーバベース・コンピューティングで課題とされているプリント機能についても、印刷を処理するスピードが4倍に向上した。
シトリックスが出荷する初めてのハードウェア、Access Gateway 4.0はネットワークのエンドポイントセキュリティとして機能する。SSL-VPNだけでなく、IPsecがサポートするTCP/UDPアプリケーションを利用できる。社内、社外などクライアントPCを利用する位置や、パッチの適用状況、アクセス手段などによって、クライアントPCがアクセスできるアプリケーションや情報をコントロールする。ポリシーベースのアクセスコントロールは従来のPresentation Serverも備えていたが、その機能を「よりきめ細かく設定できるようにした」(シトリックス)。
新製品では従来のMetaFrameブランドを取りやめ、社名+機能の製品名にした。また、単体製品よりもスイート製品の販売に軸足を移し、アクセスに関する包括的なソリューションを提供する姿勢を強める。単体製品は、パッケージ製品と電子的にライセンスを発行し、購入数に応じて価格を値引きする「Eライセンスプログラム」で販売。スイート製品のAccess Suite 4.0はEライセンスプログラムのみで販売する。Access Suite 4.0の最小構成価格は同時接続が5ユーザーの場合で50万円強。Eライセンスプログラムの「OPENライセンス」で購入した場合は、同時接続が90ユーザーで640万円程度。Access Suite 4.0の出荷は6月21日。
大古氏によると、国内でのシトリックスの導入社数は2004年末で9000社だったが、現在では1万社を超えた。ライセンスも55万ライセンスまで増加。個人情報保護の施行を受けた情報漏えい対策強化の流れが、シトリックスの追い風になっている。シトリックスはこの流れに乗りつつ、情報漏えい対策だけでなく、企業の標準インフラとしてのメリットを訴えることに力を入れる方針だ。
(@IT 垣内郁栄)
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シトリックス・システムズ・ジャパンの発表資料
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