「他社は勝負にならない」、業績好調のSalesforce.com

2005/6/1

 米Salesforce.comは絶好調の業績で突き進んでいる(参考記事)。CRMアプリケーションをASPで提供するビジネスモデルで1990年代末にスタートした同社は、ユーザー企業数1万5500社、延べ利用者数26万7000人という実績を5年間で達成した。2004年夏にはIPO(株式店頭公開)も成功させ、現在Googleと並んでシリコンバレーの注目企業だ。5月18日(米国時間)には、戦略の鍵となる最新版「Customforce 2.0」も発表した。

 同製品を担当する米Salesforce.comのプロダクト・マーケティング部門ディレクター アダム・グロス(Adam Gross)氏に、Customforce 2.0の特徴と同社のビジネスを取り巻く現状を聞いた。


――Salesforce.comにおける、Customforceの位置付けとは?

グロス氏 現在企業のPCユーザーは、PC上でMicrosoft OfficeやAdobeといったアプリケーションを用いて業務を進めている。われわれが取り組んでいるのは、こうしたアプリケーション実行環境を、Customforceを用いてSalesforce.comのプラットフォーム上に実現することだ。

――今回発表された新製品「Customforce 2.0」の特徴を教えてください。

米Salesforce.comのプロダクト・マーケティング部門ディレクター アダム・グロス氏

グロス氏 主な特徴は3点。1つ目は、Customforce Formulaと呼ばれる計算機能で、フィールドに式を埋め込めるようになった。2つ目はForecastingと呼ばれる機能で、情報の参照や詳細解析がしやすくなった。Forecastingは主に、メリルリンチのような大手ユーザー向けの機能になる。3つ目がハイライト機能で、あらかじめ、しきい値を設定しておくことで、その範囲をオーバーまたは下回ったデータを赤字でハイライト表示できる。これにより、例えば各支店の業績を一覧表示させたとき、業績が標準値を大きく下回った、あるいは飛び抜けて高い成績を残した支店を簡単に発見できるようになる。

――ユーザーからリクエストの多かった機能は何ですか。

グロス氏 一番要望の多かったのは、式の埋め込み機能。これを今回の2.0で実装することができた。Formulaにより、ユーザーがExcelのスプレッドシートで情報を管理したり、アプリケーションを組んで実現している作業をそのままSalesforce上で実現できるようになる。冒頭でも話したが、これがSalesforce.comが自身のサービスで実現しようとしていることだ。ほかの要望としては、各種の新型データタイプのサポート、より多くの種類の標準テンプレートの提供などが挙げられる。

――Excelの話が出ましたが、VBAのような機能を求めるユーザーはいないのでしょうか?

グロス氏 より柔軟なカスタマイズを求める声はあるが、いまのところ、Salesforce.comではVBAのようなコーディング型のプログラム環境を導入する予定はない。仮に導入するとしても、プログラミングなどとは違った、だれもがカスタマイズを実践できる形態のものを提供したい。今後半年以内に、これに関連した何らかのアナウンスができると思う。

――シーベルやSAP、オラクルなどライバルとのCRM分野での競合をどう考えますか?

グロス氏 カスタマイズ可能というアドバンテージがある時点で、すでにASP型CRMでは他のベンダとは勝負にならないと考えている。SAPは何か考えているようだが、シーベルではカスタマイズのような機能は持っていないし、オラクルに至ってはそもそもこの分野に参入さえしていない。振り返れば、5年前にはCRMはごく一部の大企業のためのアプリケーションでしかなく、だれもがこれほど広く利用されるようになるとは考えていなかった。Salesforce.comが“だれもが利用できるCRM”という分野を切り開いてきたのだ。

(鈴木淳也/Junya Suzuki)

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