[Interview]
次世代のセールスフォースは“マルチフォース・ドットコム”

2005/3/10

 セールスフォース・ドットコムは、ASP形式でSFA(Sales Force Automation)CRM(Customer Relationship Management)を提供している。全世界で現在1万3900社、22万7000ユーザーが利用しており、日本でも三菱商事やヤマハ、日清フーズなどが導入している。今回は、米セールスフォース・ドットコムの共同創業者でテクノロジー統括の代表取締役副社長を務めるパーカー・ハリス(Parker Harris)氏に話を伺った。


――セールスフォース・ドットコムは、「ASPではアップデートをベンダ側で一括して行えるメリットがある」と強調しているが、その際にシステム面ではどのような苦労をしているのか。

米セールスフォース・ドットコム 共同創業者 テクノロジー統括代表取締役副社長 パーカー・ハリス氏
ハリス氏 ASPのメリットはユーザーが苦労しないでアップデートできる点だが、その分ベンダは苦労している。実際にアップデートを実施する場合、12週間前から準備を行い、アップデート時には4時間程度の時間を掛けてプログラムを変更する。具体的には、データモジュールの変更が難しく、パフォーマンスとの兼ね合いを取ることに最も苦心している。いくらアップデートで機能を追加しても、パフォーマンスが落ちては意味がないだろう。

――ユーザーインターフェイスなど、アップデートをしたことでクレームがくることはないのか。

ハリス氏 確かにユーザーインターフェイスの部分はセンシティブな問題だ。従って、当社でも慎重に変更を行っている。過去17回のアップデートを実施したが、ユーザーインターフェイスを大きく変更したのは2004年に実施した前回だけだ。米Amazon.comは、Webサイトのインターフェイス変更時に、6カ月間テストサイトを開設してユーザーの声を収集した。当社も同じことをしたいくらい、ユーザーインターフェイスには注意している。

――アップデートでは、どのような基準でユーザーの声を取り入れているのか。

ハリス氏 地域別では米国が一番ユーザーが多いので、当然米国からの声が一番多い。しかし、実際のアップデートでは、世界中から寄せられた声にプライオリティを付けて、優先順位の高いものから実装している。しかし、特定の企業からだけの要望であっても、その要望を取り入れることによって、全ユーザーがメリットを享受できるのであれば取り入れることもあるので、数が多いだけで取り入れるわけではない。

――日本においては携帯電話関連の技術に特に力を入れていくというが、具体的にはどのような技術の実現を目指しているのか。

ハリス氏 まだ、日本の携帯電話でどこまでできるのか研究し尽くしてはいないが、議事録や現在進行中の商談の状況などをリアルタイムで閲覧することなどは可能だろう。携帯電話で見たい情報は、重要でかつリアルタイムでの閲覧が要求されるだろう。例えば、不動産業者がGPSを利用して、顧客を案内したりする機能なども面白いのではないか。

――実際に携帯電話関連の技術開発を行う際には、キャリアやベンダとはどのように連携していくのか。

ハリス氏 NTTドコモやベライゾンなど、ワールドワイドで展開しているキャリアとの連携は必要だろう。また、PDAメーカーの「リサーチ・イン・モーション」や携帯電話半導体メーカー「クアルコム」などのベンダとの連携も必要だと考えている。いずれにせよ、携帯電話のマーケットは非常に巨大であり、リレーションが良いため、進出したい分野だ。

――次期アップデートの時期と、アップデート内容はどのようなものになるか。

ハリス氏 次回のアップデートは6〜8月に実施予定だ。フォーキャスティング(予測)機能や、テリトリーマネジメント(担当地区販売管理)の強化など、細かい機能強化はいろいろある。中でも次期アップデートの最大の目玉は「マルチフォース・ドットコム」と呼んでいる機能だろう。この機能は、同一画面内で複数のプロセスを同時管理できるものだ。

 例えば、顧客情報という「社外情報」と、人事情報という「社内情報」を同一画面、もしくはタブを変えるだけで閲覧できるという。従来であれば、それぞれ別のアプリケーションで表示しなければならなかった。この機能はアップデートの目玉となるだろう。

(@IT 大津心)

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