ジュニパー、打倒シスコは「インフラネット」と“漫画”で

2005/6/7

 ジュニパーネットワークスは6月6日(現地時間)、タイの首都バンコクでアジア地域の報道関係者を集めて説明会を開催した。説明会では、2004年のネットスクリーン買収後、従来のキャリア向け市場からエンタープライズ市場へと重点市場をシフトしている同社の戦略を、アジア太平洋地域の状況に特化して説明した。

 ジュニパーネットワークスは9年前からキャリアやISP向けルータ/スイッチをメインに販売しており、アジア地域におけるコアルーター市場では、39%のシェアで第2位の位置を占めているという。2004年の通期売上は13億ドルを達成し、2005年第1四半期の世界売上は対前年比100%増の4億5000万ドルだった。そのうちアジア太平洋地域における売り上げは、全体の32.6%を占める1億3800万ドルに上った。この数値ついてアジア太平洋地域担当副社長 アダム・ジャッド(Adam Judd)氏は「他社のアジア地域における売上比率がおよそ17〜18%であることに比べると、当社のアジア地域の売上比率は高い。このことからも当社はアジアに特に注力していることが分かるだろう」と述べている。

ジュニパーネットワークス アジア太平洋地域担当副社長 アダム・ジャッド氏

 同社がアジア戦略を強化したことは、開発拠点を北京やインドに設置したことからも分かる。ジャッド氏は北京やインドに開発拠点を置いた理由を「当社は欧米向けではなく、アジア向けに製品を作りたかったからだ。それには、ユーザーの声を迅速に反映できるアジア地域に開発拠点を移すことが重要だった」と説明した。さらに同氏によると、2004年第4四半期にはアジア太平洋地域の拠点数が17から20に拡大し、従業員も105人から615人まで増員したという。このようなことから「ジュニパーはこの2年で大きく変わった」とジャッド氏は断言する。従来のキャリア/ISP向け市場から、シスコが大きなシェアを占めているエンタープライズ市場にシフトしていく戦略を決めたからだ。

 その理由をジャッド氏は「エンタープライズ市場のユーザーが、“キャリア/ISP製品並みの高い信頼性や安全性”を求めて始めたからだ。この流れはさらに増加していくだろう」と説明した。ジュニパーはエンタープライズ市場に参入するため、ローエンドのエンタープライズ市場向けにJシリーズやMシリーズなどの製品を開発したほか、ネットスクリーンやカグーア、ペリビット、レッドラインといった企業を買収した。

 ネットスクリーンはエンタープライズ向けにセキュリティ製品を提供しており、“カグーア”はVoIP技術に優れている。“ペリビット”はWANの最適化ソリューションを提供しており、“レッドライン”はアプリケーションをPCにインストールしなくても、Webブラウザ上から管理できるツールを提供している。これら4社を買収し、それぞれのテクノロジを融合することで、サーバのパフォーマンスやWAN、ルータのパフォーマンスを向上させ、結果としてTCO削減に貢献できるとしている。

 ジャッド氏は、「当社はキャリア向け市場に参入してから7年間でシェア39%を獲得した。エンタープライズ市場にはまだ参入して1年しか経っていないが、7年より早くシェア39%を獲得したい」と目標を示し、「そのためには、当社のキャリア市場における実績やネームバリューを生かすほか、ネットスクリーンが持っているエンタープライズ市場への窓口なども有効活用していく」という戦略を示した。

「すぐにでもエンタープライズ市場に浸透したい」

 次に、アジア太平洋地域マーケティング担当シニアディレクター アンディ・ミラー(Andy Miller)氏がジュニパーのテクノロジやソリューションに関する最新事情を説明した。特に2カ月前から取り組んでいる新しいアーキテクチャ「エンタープライズインフラネット」に関する説明が行われた。

ジュニパーネットワークス アジア太平洋地域マーケティング担当シニアディレクター アンディ・ミラー氏

 ミラー氏は昨今の企業内ネットワークについて、「アプリケーションが複雑化し、高速化が求められている」と分析。ジュニパーは従来キャリアを対象としたネットワーク機器を提供していたが、現在はネットワーク内のすべてが対象となり、IDS/IDPやSSL-VPNなどもカバーしてきているという。このように、ネットワーク内のアプリケーションを確実に動かす必要性に応えるため、レッドラインなどを買収したとしている。

 同社の新しいアーキテクチャ「エンタープライズインフラネット」では、IPインフラストラクチャによってネットワークとアプリケーション、エンドポイントインテリジェンスを取りまとめることができる。エンタープライズインフラネットでは、ユーザーはまずインフラネットコントローラに接続する。次にエンドポイントコントロールが、ウイルスなどの脅威に感染していないかチェックし、問題ない場合には認証する。この認証が取れた時点で初めてユーザーはログインできる仕組みだ。ログイン後には、強制的にセキュリティポリシーを適用させることも可能。さらに、エンタープライズインフラネット内にはパーソナルファイアウォールが設置されているため、LAN内部も管理できる。

 これらを含めたエンタープライズインフラネットのポイントを、ミラー氏は「フルコントロールでき、安全で、保証されている」の3点を挙げた。そのほかの特徴としては、ネットワーク内に存在する既存の他社製品を利用しつつ、そこにエンタープライズインフラネット対応製品を追加することで、このアーキテクチャを追加してセキュアにすることが可能な点だ。これにより、すでに他社製品が入っているネットワークに対しても、同社製品を食い込ませることが狙いであり、置き換えを狙っているわけではない点がポイントだという。

 ミラー氏はエンタープライズ市場でシェア拡大のための戦略を、「エンタープライズ市場では、シスコが10年以上活躍しているので強いのは当たり前だ。ジュニパーはまだこの市場に参入して1年しか経っていない」と説明。さらにエンタープライズ市場でシェア拡大するための秘策を「当社はやはり、すぐにでもエンタープライズマーケットに浸透していきたい。従って、意図的に漫画やカラフルな色を使った広告を展開し、企業の目に留まるようにしている」と明かした。

(@IT 大津心)

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