「OFF SAP」なるか、オラクルがERP戦略施策を相次ぎ投入

2005/10/6

 日本オラクルは10月5日、ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」(EBS)の提供に関して、日本オラクルが推奨する標準の業務フローを導入顧客や導入パートナーに提供する「Oracle Accelerator」(仮称)を開始する考えを示した。EBSの標準機能以外を開発するアドオンプログラムを少なくするのが目的。導入のしやすさを顧客やパートナーに訴えて、ERPで先行するSAPからのシェア奪還を狙う。

日本オラクル アプリケーション事業推進本部 取締役常務執行役員 アプリケーション事業推進本部長 保科実氏

 Oracle Acceleratorは「アプリケーション製品の最適な利用方法を製品ベンダの視点で提案するモデル」(日本オラクル アプリケーション事業推進本部 取締役常務執行役員 アプリケーション事業推進本部長 保科実氏)で、顧客やパートナーに無償提供する。オラクルは、製品ライフサイクル情報管理やマスタ統合、経営情報可視化、人材マネジメントなど32のソリューションについて、標準の業務フローを定義。Oracle Acceleratorではこの業務フローとセットアップのためのドキュメントで主に構成する。

 「ヒアリングで顧客の要件を聞き、その顧客向けのデータを定義する。Oracle Acceleratorのツールにそのデータを入力すると、業務フローが作成され、すぐにデモを示せる」(保科氏)。EBS導入前の要件定義ではオラクルが5月に発表したモデリング・サービスも活用する(参考記事)。

 標準以外の機能を追加で開発するアドオンプログラムは、ERP導入やサポートのコストを増大させる要因の1つといわれる。Oracle Acceleratorはオラクルが定義した業務フローを顧客に使ってもらうことで、アドオンを減らすことを目指す。保科氏には、「オラクルが標準と考える業務フローをパートナーに情報提供できなかったことを反省している」との思いがある。パートナーがオラクルの標準業務フローを理解していなかったため、「パートナーがユーザーの要件をヒアリングしても標準のフローに落とし込みができず、アドオンが発生したり、プロジェクトマネジメントが難しくなっていた。Oracle Acceleratorが持つ意味は大きい」。Oracle Acceleratorを提供してもカバーできない機能は、日本オラクルが9月8日に発表した「Japan Baseline Project」で標準仕様に盛り込み、個別のアドオン開発が発生しないようにする。

 EBSがターゲットにするような中堅以上の企業の多くは、すでにERPを導入しているケースが多い。中堅以上、特に大企業ではSAP製ERPが高いシェアを持つ。オラクルが狙うのはSAP顧客の奪還だ。日本オラクルは9月26日、EBSに移行するSAP R/3のユーザー企業に対してライセンスを割り引く、「OFF SAP」プログラムを提供開始すると発表した。日本オラクルのコンサルタントによる移行計画の個別査定なども提供する。OFF SAPは「Oracle Fusion for SAP」の略だが、「SAP利用企業が“OFF SAP”(SAP製品をやめる)ことをサポートする」(日本オラクル)。

 保科氏はOFF SAPの狙いについて「特にファイナンシャルに注力したい」と説明。すでにOFF SAPキャンペーンを始めている欧米では、SAP顧客の10%からオラクルに対して問い合わせがあったことを明らかにしたうえで「日本のOFF SAPはグローバルよりも実は多くなるかもしれない」と自信を見せた。

 オラクルはアプリケーション製品のサポート・サービスを無期限にする「ライフタイム・サポート・ポリシー」も同日発表した。アプリケーション製品の現行のサポートは出荷後5年の「Premier Support」(旧フル・サポート)、特定リリースのみサポートを3年間延長する「Extended Support」(旧延長メンテナンス・サポート)だが、新たに技術的な問い合わせを受け付け、既存パッチを提供する「Sustaining Support」を提供する。Sustaining Supportは旧アシスタンス・サポートと同様のサポート内容だが、期間が無期限となっている。Sustaining Supportの年間料金は、Premier Supportと同じでライセンス価格の22%分。新規のバグが見つかった場合は、有償でパッチの提供も行う。Sustaining Supportの対象はOracle E-Business Suite 11i.7移行の製品だが、保科氏は「Oracle Databaseを含めて順次、全製品に適用したい」と述べた。

(@IT 垣内郁栄)

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日本オラクルの発表資料

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