SAPがISVをリクルート、「エコシステムが競争優位に」

2005/10/25

 SAPジャパンは、SOA環境の充実を目指してパートナーの大幅拡充に乗り出す。ISVパートナー向けのパートナープログラム「Powered by SAP NetWeaver認定プログラム」の説明会を10月25日に開催し、ISVのリクルーティングを本格的に開始する。SAP本社のビジネス・ディベロップメント・ディレクター ISVパートナープログラム担当のベルント・シュマルツリット(Bernd Schmalzridt)氏は「できるだけ多くのISVに参加してもらい、(SAPアプリケーションが対応しない)ホワイトスペースを埋めたい」と述べた。

 募集するのは、コンポジット・アプリケーションを構築するためのISV。コンポジット・アプリケーションは、個別の業務アプリケーションやソフトウェアのコンポーネント、サービスなどを組み合わせて構築するアプリケーション。これまでSAPアプリケーションで対応できない機能は手組みで開発することが多かったが、今後は各ISVのアプリケーションを組み合わせることで対応する。

SAP Labsの市場開発 エンジニアリング・チーム バイスプレジデントのカイ・ヴァン・デ・ルー氏

 SAPはこれまでOSやミドルウェアなどインフラストラクチャ製品のベンダや導入パートナーとの関係が密で、ISVとの協業は積極的でなかった。しかし、システムを柔軟、迅速に開発するには、パートナーの協力を得て、SAPのSOA環境「エンタープライズ・サービス・アーキテクチャ」(ESA)環境を整備することが重要と判断した。

 SAP Labsの市場開発 エンジニアリング・チーム バイスプレジデントのカイ・ヴァン・デ・ルー(Kaj van de Loo)氏は、「SAPはアプリケーションベンダとしてベストなテクノロジにベストなアプリケーションを載せようとしてきた。今後はより多くの協業を行うためにオープンな手法を採る。SAPにとっては大きな変革だ」と述べている。

 SAPはESA環境のシステムを3つのレイヤで考えている。最上位レイヤはユーザーにサービスを提供するコンポジット・アプリケーション、中間レイヤがほかのシステムとの統合と、アプリケーションを提供するためのプラットフォームである「アプリストラクチャ」、最下位レイヤがOSやデータベースなどの「インフラストラクチャ」だ。SAPのビジネスプロセスプラットフォーム「SAP NetWeaver」は、アプリストラクチャを構築するためのミドルウェア群で、非SAP環境の統合やコンポジット・アプリケーションの稼働プラットフォームとなる。SAP NetWeaverの次期バージョンでは、利用可能なアプリケーションのリソースをメタデータとして蓄積する「エンタープライズ・サービス・リポジトリ」を実装するという。

 ミドルウェア、アプリケーションの今後の競争は、このアプリストラクチャにいかに信頼性、拡張性、柔軟性を持たせて、パートナーに提供できるかにかかっているとSAPはみている。「優秀なプラットフォームを提供し、魅力的なアプリケーションを開発するパートナーといかにエコシステムを構築するかが今後の競争優位になる」(ルー氏)。そのためSAPはSAP NetWeaverの開発を急ぐとともにIBMやインテル、シスコシステムズなどインフラ面を強化するパートナーシップも継続し、エコシステムの充実を図る。

 SAPの考えを推し進めれば、アプリストラクチャを構築するパートナーとのエコシステム自体が競争力の源泉になるともいえる。ルー氏はアプリストラクチャについて「わずかなプレーヤーしか出現しない」と指摘し、「重要なプレーヤーになるのがSAPの方針だ」と述べた。SAP同様にミドルウェアやアプリケーションを充実させて、SOA環境の実現を目指しているオラクルについては「Oracle DatabaseはSAPユーザーの間で最も使われているデータベースだ。しかし、今後のテクノロジについてはIBMとの協業がより重要になるだろう」と説明した。「オラクルが何社を買収しても、1つののれんの下で多くのアプリケーションを開発してきたSAPの実績にはかなわない」

(@IT 垣内郁栄)

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