大きな目標を掲げたSAP新社長、達成はパートナー戦略が鍵
2005/9/13
SAPジャパンの代表取締役社長に8月1日付けで就任したロバート・エンスリン(Robert Enslin)氏は9月12日会見し、販売、導入、ソリューション開発など中堅企業向けのビジネスパートナーを拡充する考えを示した。パートナーの拡充で、2006年にはパートナーを通じたビジネスを現在の3倍にすることを目指す。SAPジャパンのパートナープログラムを、SAPが2006年初頭にも発表するグローバルのパートナープログラムと統合する考えもエンスリン氏は示した。SAPのパートナー環境は今後大きく変わることが予想される。
SAPジャパンの代表取締役社長 ロバート・エンスリン氏。SAP南アフリカ、SAPアメリカに在籍し「グローバルとローカルのどちらも経験がある」 |
エンスリン氏はSAPジャパンの3代目の社長。同氏はSAPのビジネス・アプリケーションがグローバルではほとんどの分野でトップシェアを維持しているのに対して、国内では会計・財務や人事などいくつかの分野で2番手、3番手に甘んじていることを指摘したうえで、「グローバルなスケールを使えばすべての分野でNo.1になれる。そのために頑張りたい」と自らの目標を設定した。SAPジャパン全体のビジネスを2010年には現在の2倍にすることを目指す。
同氏はSAPジャパンが今後フォーカスするエリアとして、顧客、ビジネスパートナー、従業員、技術革新の4つを挙げた。そのうち、最も大きな影響が内外にありそうなのがビジネスパートナーのエリア。特に中小企業向けのパートナーでは販売や導入、トレーニングなどに強みを持つパートナーを大幅に拡大し、「パートナーのエコシステムを構築する」(エンスリン氏)。SAPジャパンの中堅、中小企業への進出は、高いシェアを持つ国産ベンダのパッケージソフトウェアに阻まれて苦戦も伝えられる。しかし、SAPジャパンのバイスプレジデント アライアンス本部長 竹田邦雄氏は「中堅中小企業向けのmySAP All-in-Oneや中小企業向けのSAP Business Oneは今年の半期で、すでに昨年1年の実績を超えた」と説明し、「苦戦ではない」と述べた。
大企業向けパートナーの戦略では、SAPのSOA戦略「エンタープライズ・サービス・アーキテクチャ」(ESA)の実現を目指し、次期プラットフォーム構想「ビジネス・プロセス・プラットフォーム」(BPP)の浸透を急ぐ。BPPはSOAを基盤とし、パッケージソフトウェアと顧客独自の要求に基づくアプリケーションを柔軟に組み合わせることができる。SAPはこのBPPの特徴を生かして、大企業や中堅企業向けの業種別ソリューションをパートナーと共に拡充する考え。SAPジャパンのバイスプレジデント ソリューション統括本部長 玉木一郎氏は「業種別のノウハウをもっと細分化して、顧客に対してテーラーメイド化したソリューションを提供する」と説明した。玉木氏は「裏ではプラットフォームが下支えしている」とも述べ、BPPによって大企業、中堅企業向けの業種別ノウハウの提供が可能になるとの考えを示した。
BPPは、短期導入や低コスト、ベストプラクティスなどのパッケージソフトウェアのメリットと、柔軟なカスタマイズという手組みソフトウェアのメリットの両立を目指した考えで、「日本独自のビジネスプロセスを作り上げていくことが可能になる」(エンスリン氏)。このBPPの提供によってSAPでは「SAPとパートナー企業との関係が大きく変わる」(玉木氏)と見ている。
SAPとパートナー企業、特にISVとはアプリケーションベンダ同士の関係の側面が従来は強かった。しかし、BPPはSOAプラットフォームであり、ISVは自らのアプリケーションを細分化して、柔軟に組み合わせ可能なコンポジット・アプリケーションをBPP上で構築できるようになる。SAPはこのBPP戦略に対応させた製品やサービスをすでにリリースし始めている。2006年初頭に発表が予定されているSAPのグローバルなパートナープログラムもBPPを想定した内容になるとみられる。SAPは今後、BPPへの対応をパートナー各社に求めていくと考えられ、SAPとパートナーの関係はプラットフォームベンダとアプリケーションベンダの関係へとカバー領域が広がっていく。
(@IT 垣内郁栄)
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